「iPhone 7」や「AirPods」を発売したAppleは、スマートフォンで大きくビジネスに革新をもたらせようとしている。
Appleが発売したイヤフォン端子のない「iPhone 7」と無線イヤフォン「AirPods」は、デバイスを他のデバイスやインターネット、人とコードレスでつなぐ未来を描き出している。サンフランシスコで開かれたAppleの発表会は、コンシューマーをターゲットとしていたが、私の念頭にあったのはビジネスにおけるモバイルの未来だった。
Forrester Researchのアナリスト、クリストファー・ボース氏に、モバイルの未来について尋ねてみた。今から5年後、10年後、15年後、企業はどんなことのためモバイル端末を使っているのだろうか。同氏の答えは「多くのこと」だった。
現代のスマートフォンやタブレットは主に、ニュースを読んだり買い物をしたり、友人や同僚とコミュニケーションしたりといった情報閲覧の目的で使われる。だが将来的には「トランザクション」目的での利用が増える見通しだ。
そうした作業は複数の形態を取りえるとボース氏は言い、下記を事例として挙げた。
確かにそうした業務の一部は、既にモバイル端末で実用化されている。だがForrester Researchの調査で、技術者やデザイナーといった一部の職種は「モバイルに関する対応が不十分」な実態が判明した。つまり、そうした職種で生産性を高めるためのモバイルツールが求められている。例えば、コンピュータを使った設計システムや、仕様情報の収集や顧客へのプレゼンに使えるモバイルアプリケーションが挙げられる。「法人分野では、それが次の開拓分野になる」とボース氏は言う。
企業がモバイル端末の新しい業務利用法を開拓する一方で、Appleはコンシューマーにアピールする現在のやり方を続ける公算が大きい。
「Appleに関して対コンシューマー企業という捉え方をすると話が見えにくくなるかもしれない。同社は、主にコンシューマーに重点を絞っているが、そのユーザーは仕事もする。自宅でも職場でもスマートデバイスを使う人物にアピールできれば、販売台数を増やして成長する助けになる」(ボース氏)
iPhone 7がその伝統を継続するかどうかはまだ分からない。ヘッドフォン端子がなくなったことについてはソーシャルメディアに不満の声が殺到し、AirPodsについても同じだった。精彩を欠く反応は市場調査会社Morning Consultの調査でも裏付けられている。iPhone 7の話を聞いた人のうち68%は、「購入予定なし」と回答した。
だが新製品の処理能力の向上や耐水、防塵性能を好意的に評価する声も多い。iPhone 7が発売されると早々と売り切れ、モデルによっては納期が11月にずれ込んでいる。手段はミステリアスだったとしても、大衆へのアピールがうまくいっているのかもしれない。
Nemertes Researchのアナリスト、アーウィン・レーザー氏によると、モバイルビジネスの未来におけるAppleの役割は、他の企業との提携を通じて築かれる公算が大きい。例えばIBMとの提携は、小売りや金融、旅行、医療、エネルギーといった業界向けに100本を超えるモバイルアプリケーションを生み出した。SAPとの提携ではSAPのバックオフィスシステムと連係するアプリケーションが登場した。アイケア製品を手掛けるBausch & LombやCisco Systemsとの提携も浮上している。
「ほとんどの企業はAppleとの直接的な取引はない」とレーザー氏は指摘する。多くの企業は取引をしているSAP、Cisco、Microsoftなどの企業に目を向けて、「Appleと取引をしている各社が、Appleとうまくやっている様子」に注目しているという。
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