ビジネスのデジタル変革のためには多くの課題を解決しなければならない。真の意味でのデジタル変革を実現するために重要な4つのポイントを紹介する。
米マサチューセッツ工科大学(MIT)内のスローン経営学大学院で主任研究員を務めるジャンヌ・ロス氏は、2017年5月開催のCIO(最高情報責任者)向けカンファレンス「MIT Sloan CIO Symposium」に登壇し、デジタル変革イニシアチブの主要な柱として、ビジョン、アクション、アーキテクチャを挙げた。
MITスローン経営学大学院にある研究機関「情報システム研究センター」(CISR: Center for Information Systems Research)で主任研究員を務めるジャンヌ・ロス氏によると、業務のデジタル化への道は決して楽なものではないという。従業員の誰かの自己満足で終わらない、真の意味でのデジタル変革を成し遂げるには、文字通り自社業務の再発明をする覚悟で臨む必要がある。
「デジタル変革のカギを握るのはテクノロジーではない」と、同カンファレンスに登壇したロス氏は説明する。「デジタル変革の要は、自社のバリュープロポジション(価値提案)の再定義だ。そのバリュープロポジションを実現するには、自社を再設計しなければならなくなる。本当に難しいポイントはここだ」
「再設計を」というロス氏の指導は、同じくMITスローン経営学大学院でかつて活躍した思想家、故マイケル・ハマー氏を想起させる。振り返れば1990年代、ハマー氏は大企業に対して、時代遅れになったプロセスは自動化するのではなく、「抹消する」ようにと促した。以来、根本的な再設計が、同氏の提唱するBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)構想の基礎となった。BPRは容易なものではなかったが、それはデジタル変革も同じことだ。ロス氏は、企業幹部が厳しい前途に立ち向かうに当たって考慮すべき事柄を4つの質問、すなわち意思決定のポイントにまとめて、その概略を説明する。
デジタル変革戦略を開始する企業には、それによって何を達成したいのかというビジョンが必要で、かつそのビジョンは、自社Webサイトに掲載した声明以上に具体的なものでなければならないと、ロス氏は主張する。変革を成功させるためには、企業は毎日ビジョンを制定する必要があるし、従業員はそれに対してどのように貢献するかを、各自で自覚しなければならない。
ここでロス氏は、電器メーカーPhilipsの例を指摘する。同社は「2025年までに年間30億人の人々の生活を向上させる」というビジョンを掲げているという。「HealthSuite Digital Platform」は、このビジョンを実践している同社の計画の一環だ。これは、ヘルスケアに関する詳細なビッグデータをクラウド経由で集約し、リアルタイムで分析できるシステムである。医療提供者はこの分析結果を使い患者の状況を素早く察知し、迅速な対応を取ることが可能になる。
確かに、デジタル変革を実現するためには、将来へのビジョンと実行力が必要だ。そこでロス氏に、次の質問をぶつけてみた。
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