ハイブリッドクラウドはインフラ管理が複雑になる場合もある。それだけでなく、管理ツールを導入しないと支出が多くなる可能性がある。
Gartnerの報告書「Critical Capabilities for Cloud Management Platforms(クラウド管理プラットフォームに欠かせない機能)」の推計では2021年までに、クラウド管理ツールを導入しない組織の75%の支出はツールを導入した場合を上回る。
ワークロードをクラウドに移行する能力を持つことも必要だが、他にも検討すべき課題は多数ある。どのアプリケーションがクラウドに最適なのか。必要のないサービスにまで料金を払わずに済むためにはどうすべきか。オンプレミスとクラウドで運用するインフラはどう管理できるのか。考えるべき問題はさらに多い。
BMC Softwareのデジタルサービス運用ソリューションマーケティング担当バイスプレジデントのビル・タルボット氏によると、オンプレミスもクラウドも管理の基本原則は同じだが、クラウドが投げ掛ける課題は幾つかある。
「オンプレミスのインフラとソフトウェアはこれまでも現在も、ビジネスニーズに確実に対応させる専門知識やツール、プロセスを持ったITチームが一元的に管理するのが普通だった。だがクラウドサービスが利用しやすくなると、ITとビジネスオーナーの両方がクラウドやプラットフォームサービスを調達できるようになり、クラウドとソフトウェア管理の複雑性が増した」(タルボット氏)
マイクロサービスアーキテクチャをベースとする新しいクラウドネイティブサービスの台頭により、新種の運用慣行やセキュリティ慣行が登場し、事態は一層複雑になった。組織は今も、それになじもうとする途上にある。
さらにライセンス料という要因もある。「ライセンスのあるソフトウェアをIaaS/PaaSで運用する場合、料金体系が異なる可能性がある」。Flexeraのクラウド戦略担当バイスプレジデント、キム・ウェインズ氏はそう解説する。「例えばOracleのライセンスは、AWS(Amazon Web Services)とMicrosoft Azureについて、オンプレミスとは異なるCPUコアファクターを使っている。加えて、サービスの総コストを把握するためにはITチームがソフトウェアのライセンス料とインフラのコストの両方を理解しておく必要がある」
クラウドを使う場合はコストを厳密に管理することが重要だ。BMCのタルボット氏は、「クラウド管理の最大の課題は、移行、コスト、セキュリティ、ガバナンスにあり、一般的にはその順序になる」と話す。
特に、企業が過去の悪習の付けを負わなければならないこともある。タルボット氏は言う。「クラウドはオンプレミスのITリソースを管理していたときの悪い習慣を露呈させる。IT経費の大部分は設備投資予算から来ているため、ITリソースの過剰調達や未活用に対する反動がなかった。だがクラウドは、過剰なサービスの調達や使わないサービス、プラットフォームサービスの自動スケーリングの設定ミス、あるいは誤った料金体系の選定への反動が即座に現れる」
Flexeraのウェインズ氏は、明るい兆しも見えると話す。「CIO(最高情報責任者)はクラウドについて把握する初期段階にある。多くの企業にクラウド設計担当者がいて、クラウドのセンター・オブ・エクセレンスを創設している」
だが課題もあるとウェインズ氏は言う。「彼らは今も、SaaS、ソフトウェアライセンス、クラウドインフラなど、急速に増大するクラウド関連の支出を管理しようとして苦戦している。クラウドの利用やクラウドのワークロードは継続的に変化することから、これは一度修正すれば済む問題ではない。自動化したポリシーを活用して継続的にクラウド利用を最適化し、無駄な支出を削減する必要がある」
引き続きライセンス料にも目を配る必要がある。クラウドでもライセンス管理の必要性は軽減されない。CIOがやるべきは、将来的な利用を予測しようと務めることだとタルボット氏は言う。クラウドの短命性を考えると、それは難しい場合もある。「クラウドコスト管理ツールを導入して、クラウド支出や予算を管理・予測する一助とし、自分たちが運用するワークロードに最適な料金体系を理解しなければならない」(同氏)
後編(Computer Weekly日本語版 8月7日号掲載予定)では、クラウドファーストのためのアプローチ方法やプロセス管理ツールなどについて解説する。
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