ライセンス変更によるOSSのクラウド利用制限を巡る懸念岐路に立つオープンソース精神

AWSはオープンソースを搾取している。OSS企業のライセンス変更に始まりNew York TimesによるAWS批判記事へと発展した騒動は今、ライセンス変更に対する疑問に進展した。他のOSS企業・団体の意見とは?

2020年02月21日 08時00分 公開
[Cliff SaranComputer Weekly]

 2019年12月、New York TimesはAmazon Web Services(AWS)がオープンソースプロジェクトを「ストリップマイニング」していると報じた(訳注:Computer Weekly日本語版 2月5日号参照)。AWSはコミュニティーに貢献することなく、オープンソースコードに基づくマネージドサービスを提供しているというのがその記事の主張だ。

 AWSで分析およびElastiCache部門のバイスプレジデントを務めるアンディ・グットマン氏はこれに反応する形でブログ記事を投稿し、「Elasticsearch」など人気の高いオープンソースプロジェクトのマネージドサービスを提供するよう、AWSは顧客から繰り返し要請を受けているとコメントした。

 「オープンソースプロジェクトのメンテナーの多くが、そのプロジェクトに関連する営利企業を立ち上げている」と同氏は話す。

 「一部はこれをゼロサムゲームと見なし、オープンソースプロジェクトのマネージドサービスを自由に収益化できる唯一の存在になりたいと考えている。そのため、彼らはオープンソースのライセンス条項を変更して真のオープンソースと独占所有物としてのコードを両立させている」

 オープンソースライセンスは、コアコードのブランチとして新機能の構築を可能にすることで、オープンソースの貢献者にイノベーションを促すことを目的としている。プロジェクトの管理担当企業は、その後、貢献者が構築した新機能をコアコードに組み込むことも可能だ。

 オープンソースのビジネスモデルでは、企業顧客が必要とする機能などの強化に対してオリジナルプロジェクトを支える開発者が料金を請求できるようにするため、一部の機能群をコアコードから除外する。企業顧客にSaaSとして自社製品を提供するため、自社オープンソース製品のマネージドサービス提供を試みる企業もある。

 Cloud Foundry Foundationの常任理事を務めるアビー・カーン氏は、New York Timesの記事に対して次のようにコメントしている。「商用製品の背後にあるソフトウェアがオープンソースの場合、誰かが別の商用ソフトウェアサービスを構築するのを止めるすべはない」

オープンソース独占使用の可否

 2019年3月、オープンソースDevOpsツール企業GitLabのCEO兼共同設立者であるシッツェ・シブランディ氏は次のように警告した。「商用オープンソースが直面する最大の課題は、ハイブリッドクラウドプロバイダーをどう扱うかだ」

 「『Apache Kafka』を開発しているConfluentなどの商用オープンソース企業は、その後ハイブリッドクラウドプロバイダーになってKafkaをas a Serviceとして提供している。これは、こうした企業が収益源として頼みにするSaaSと競合する」

 「こうしたことが、Redis Labs、MongoDB、Elastic、Confluentなど、多くのオープンソース企業が非競合のライセンスを導入してマネージドサービスにライセンス料金の支払いを求める動きにつながっている」

 だがシブランディ氏によると、このライセンス変更によってコードはもはやオープンソースではなくなっているという。「このような企業がうまくいくことを望んでいるが、オープンソースの特徴であるロックインが生じない点も好んでいる」

 同氏は、人々がElasticsearchに支払う対価をAWSが直接追い求める手法について説明した。オープンソース製品の企業版はオープンソースプロジェクトのフォークを作成し、これを無償で利用可能にする。そして企業向けアドオンを商品化する。コードでオープンAPIを提供すれば、オープンソースプロジェクトの商品化がはるかに容易になると同氏は示唆する。

ターゲットにするのは異なる種類の購買層

 「GitLabのアプローチは、異なる種類の購買層をターゲットにしている。顧客が価格に敏感であれば、有料製品よりもオープンソース製品を選ぶ可能性は高くなる」とシブランディ氏は言う。

 同社の製品には、コアコードに基づく個人向けの無償版GitLabがある。管理者は追加機能に対して少額の月額サブスクリプションを支払う。GitLabの最も高価なバージョンは、組織内の複数のプロジェクトにまたがるDevOpsライフサイクル全体の監視を実現する。

 「プロプライエタリな機能が多くなるほど、商品化される可能性は低くなる」とシブランディ氏は言う。

 このモデルは時間の経過とともに進化し、現在のGitLabによるオープンソース製品の商用化手法に到達している。だがビジネスモデルは進化する必要がある。そのため、これはオープンソース企業が現在直面しなければならない課題だと警告する専門家もいる。ただし、オープンソース企業がどのようにして自社のオープンソースプロジェクトの知的財産に商品価値を生み出し続けることができるかについては、議論の的になっている。

 「私見だが、資本主義とオープンソースは均等な機会に基づいた強固な競争がある状態で最もうまく機能する」と話すのは、OpenStack Foundationで最高執行責任者を務めるマーク・コリアー氏だ。

 「大規模で支配的なクラウドプラットフォーム企業の脅威にさらされている企業には同情するが、ライセンスを変更して競争を制約し、自社の占有状態を確保することは、市場やオープンソースに優れた成果を生み出す可能性を抑えることになる」

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