ホテルフランチャイズを営むChoice Hotelsは宿泊予約システムをはじめとした自社システムのクラウドサービスへの移行を進めている。その理由と、クラウドサービス移行で得られた効果とは。
Choice Hotels Internationalは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を機に、Zoom Video Communicationsの「Zoom」とMicrosoftの「Microsoft Teams」といったコミュニケーション用アプリケーションを導入し、従業員のテレワークを可能にした。それに加えて、クラウドサービスに構築したマーケティングと宿泊予約のためのシステム「choiceEDGE」の活用も進めている。前編「『コンフォートイン』運営の大手ホテル会社が、テレワークのために入れたITとは」に続く本稿は、同社のクラウドサービス移行の取り組みを説明する。
AWS をインフラとするchoiceEDGEは全世界からの接続を可能としており、Choice Hotelsの公式Webサイトで受け付けた予約や「Expedia」などの提携旅行予約サービスを通じた予約、ホテルのフロントで受け付けた予約を追跡する。こうしたさまざまな客室予約システムの間で相互のデータ共有を可能にすることで、顧客の予約を確保しやすくなり、パンデミック中でも各フランチャイズホテルの客室稼働率を向上させることができたという。
Choice Hotelsは当初choiceEDGEをオンプレミスインフラで運用しており、2015年にクラウドサービスへの移行に着手した。シンプソン氏によると、オンプレミスのデータセンターの場合は、旅行客の需要がピークとなる時期に合わせて設計しなければならないことが問題だった。クラウドサービスなら、サーバやストレージの容量を必要に応じて変えることができる。
クラウドサービスに移行させたことで、新たな提携企業にchoiceEDGEを利用してもらうことも容易になったとシンプソン氏は語る。Choice Hotelsは2020年から2021年にかけてリゾート施設運営会社のAMResortsとカジノ施設運営会社のPenn National Gamingを提携企業として迎え入れている。提携企業がchoiceEDGEを利用可能にすることで、単一のシステムでChoice Hotelsはホテル以外の施設で顧客の予約を受け付けたり、顧客向けポイントプログラムを管理したりできるようになった。
Choice Hotelsにはオンプレミスインフラで運用している自社システムもある。同社はオンプレミスインフラを可能な限り削減する方向だ。2023年までに全システムの90%をクラウドサービスで運用し、バージニア州にある同社のデータセンターを閉鎖することを目標としている。
シンプソン氏が着任する前から、Choice HotelsはRubrikの同名バックアップ製品を使っていた。「バックアップの重要性はパンデミックを機に大幅に高まった」とシンプソン氏は話す。Rubrikの導入当初はオンプレミスインフラのバックアップのために利用していたが、その後新しく導入したMicrosoftの「Microsoft 365」(Office 365)やAWSの「Amazon Elastic Compute Cloud」(EC2)といったクラウドサービスの保護も実行している。シンプソン氏によると、Choice Hotelsのデータベースのクラウドサービスへの移行に伴い、Rubrikとの連携をさらに緊密にさせる。「所持しているデータは全てバックアップする必要がある」(同氏)
COVID-19がもたらす混乱に乗じたランサムウェア(身代金要求型マルウェア)攻撃が活発化している。Choice HotelsはRubrikでバックアップを実行することで、ランサムウェアの防御も可能になったとシンプソン氏は話す。
パンデミックが収束しても、Choice Hotelsはオンプレミスインフラの運用を続ける計画だ。ただしオンプレミスインフラとクラウドサービスのバランスは、クラウドサービスが優勢になるとシンプソン氏は語る。パンデミック中のテレワーク体制を継続するかは未知数だが、少なくとも同氏はZoomとMicrosoft Teamsを引き続き使用することに前向きだ。
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