サプライチェーンリスクの正確な把握は、有事の際に被害を少しでも減らすために重要だ。リスクの特定に有用な、ベンダーの分類方法と対処法とは。
中編「『要件が曖昧』『ベンダーの意見無視』『不信感』 失敗する調達担当に足りないもの」は、「ベンダー関係管理」(VRM)の要件整理と、ベンダーとのコミュニケーションの透明性を高めることの必要性について解説した。後編は、サプライチェーンリスクの克服など、残る課題と解決策を解説する。
サプライチェーンのリスクとそれに伴う不確実性は、ユーザー企業とベンダーの関係に悪影響を及ぼす恐れがある。
「サイバーセキュリティリスク、信用リスク、財務リスク、製造リスクなどのカテゴリーでリスクを定量化し、その数値別にベンダーを分類する」。コンサルティングと会計業務を手掛けるGrant Thornton Internationalで、サプライチェーン戦略部門のディレクターを務めるボブ・ホーキー氏はそう話す。サイバーセキュリティの対策が甘く、攻撃に対して脆弱(ぜいじゃく)で、企業情報を危険にさらす恐れがあるベンダーは、サイバーリスクのカテゴリーに分類する。政治や労働に関する問題がある地域で運営するベンダーは、製造リスクのカテゴリーに分類できる。
各ベンダーのリスクを分類すると、「サプライチェーンのリスクを特定する技術を利用して、各ベンダーを見守ることができる」とホーキー氏は話す。例えば、人工知能(AI)を使ったデータ集約システムを利用してソーシャルメディアにある情報を24時間365日無休で監視することで、リスクを早めに特定するといった対策ができる。
ジャストインタイム(JIT)の手法は、できる限り無駄のない方法でサプライチェーンを管理し、実質的に在庫を抱えずに需要と供給を調整することに重点を置く。さまざまな企業がJITの実現を目標にしている。だが脆弱な面もある。その脆弱性は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)によって明らかになった。
JITは万能の手法ではないとホーキー氏は話す。ユーザー企業はJITによって得られるメリットとJITに関連するリスクを比較し、JITのモデルに従うことが賢明かどうかを判断する必要がある。
ユーザー企業は利用する技術を業務プロセスの中にうまく組み込むことができなければ、VRMの改善はより困難になる恐れがある。
「VRMに関する情報をERP(統合業務システム)と連携させ、データを1カ所に集約できる技術を使用することが重要だ」。調査およびコンサルティングを手掛けるInfo-Tech Research Groupでリサーチ部門のディレクターを務めるリサ・ハイフィールド氏はそう語る。
サプライチェーンも技術も絶えず変化しているため、「業務プロセスも絶えず最適化しなければならない」とハイフィールド氏は話す。だが、それは簡単なことではない。
VRMの効率ばかりに目を向けると、購入超過や購入不足が発生する恐れがある。この解決方法として、工業製品ベンダーStellar Industrial SupplyのCEO、ジョン・ウィボーグ氏は「生産目標をVRMに結び付ける」ことを提案する。ユーザー企業はVRMの情報を在庫情報に関連付け、その情報を絶えず確認するとよい。
ベンダーと良好な関係を築くことも重要だ。ベンダーが在庫切れのリスクを通知したり、古い在庫の管理負担を軽減したりしてくれる可能性がある。
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