ITサービスベンダーはメインフレームの運用や管理に精通する人材を確保するために、さまざまな対策を講じている。従業員育成、自動化技術の活用……。各社は何に力を入れているのか。
レガシーシステムのメインフレームは2022年現在も企業で動き続けている。しかし、その運用や管理に携わる人材の不足は深刻化。企業はどうすればいいのか。前編「“レガシー人材”求む 『メインフレーム管理者』がかつてないほど貴重な理由」は、メインフレーム関連のITサービスベンダーの取り組みに光を当てた。後編となる本稿は、ITサービスベンダーの人材確保の具体策を紹介する。
メインフレーム関連サービスを手掛けるITサービスベンダーは、どのようにして専門人材を育成し、確保しているのか。
各社が注力していることの一つが従業員のトレーニングだ。メインフレームのモダナイゼーション(最新化)を手掛けるEnsonoは2017年、トレーニングプログラム「Mainframe Academy」を米国や欧州、インドで立ち上げた。このプログラムはEnsonoがIBMなどのパートナー企業と共同でカリキュラムを組み、IT業務の未経験者を含めた従業員にインフラ管理についてレクチャーする仕組みだ。教室で知識を身に付けさせた上で、プログラム参加者をユーザー企業の現場に送り出し、実践力を高める。
Ensonoプレジデントのマーク・カプリ氏はMainframe Academyについて、「AccentureやDeloitte Tohmatsu Consultingが実施している新人コンサルタント向けのブートキャンプ(集中的にスキルを習得させる研修)のようなものを目指している」と言う。カプリ氏によると、特に若手の従業員がMainframe Academyに高い関心を示している。「就職したばかりの人材は最新技術だけに興味があると考えがちだが、実はメインフレームのノウハウを得ることにも意欲的だ」とカプリ氏は言う。
若手のIT人材は、メインフレームという大きなテーマの中で特定の分野を見つけ、その知識を深めながら“自分だけのスキル”を身に付けることがキャリア形成に有利だとカプリ氏は語る。
Ensonoの同業であるAdvancedは、メインフレーム専門の人材を維持するために採用活動に力を入れ、入社後のトレーニングを実施している。同社グローバルマネージングディレクターのブランドン・エデンフィールド氏は「当社で活躍するために最も価値のある武器は『実務経験』と『プロジェクトの失敗から学ぶこと』だ」と述べる。
自社従業員と下請け業者の専門人材の力を組み合わせ、メインフレームの関連サービスを提供しているのがAdaptigent(旧GT Software)だ。同社プレジデントのアレックス・ヒューブライン氏は、「メインフレーム専門の人材確保の成否は工夫次第だ」と話す。同社は「人」に加え、自動化をはじめとした技術の活用にも取り組んでいる。
ヒューブライン氏によれば、自動化によってエンジニアは複雑なコードを記述する作業を省き、負担を軽減している。AdaptigentはRPA(ロボティックプロセスオートメーション)ツールを採用してシステム管理者の作業も自動化。これらの取り組みによって人材の再配置を可能にし、より付加価値の高い仕事を追求していると同氏は言う。
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