快適なハイブリッドワークのために人事部門が支援できるIT施策は何か。ある企業は「Slack」の拡張機能を使い、ある企業は自社開発のツールを使っている。具体的な事例を紹介する。
本連載は、オフィスワークとテレワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」に対する人事部門の支援策を事例とともに紹介してきた(前編「対面希望の顧客、働き過ぎる社員――テレワークの『あるある課題』を解決するヒント」、中編「テレワークだと低評価? ハイブリッドワークでの不公平な人事評価をなくす方法」)。後編となる本稿は3つ目の支援策を紹介する。
ハイブリッドワークでは従業員の孤立が問題になりがちだ。人事(HR)業務を技術で改善する「HR Tech」は、従業員同士のオンラインのつながりを容易にする。
ID管理会社Auth0は、Slack Technologiesが提供するビジネスチャットツール「Slack」と連携できるアプリケーション「Donut」を導入して従業員同士のコミュニケーションを促している。DonutはSlackのチャンネル参加メンバーの中からランダムなペアを選出する機能を持つ。Auth0はDonutを使い、従業員のランダムなペア同士がWeb会議ツール「Zoom」を使って非公式に集まれるようにした。
「Donutを使った集まりはとても楽しく、招待された従業員は30分ほどひたすら話をしたり、コーヒーを飲んだりしている」とAuth0で人事担当シニアバイスプレジデントを務めるキャロリン・ムーア氏は話す。ムーア氏によると、Donutで集められたほとんどのグループがZoomを使って集合写真を撮る。「各グループが社内全体に共有できる場に集合写真を投稿するので、他の従業員の様子が分かるようになった」(同氏)
人材の最適化をネットワーク分析によって支援するコンソーシアムConnected Commonsの創設者ロブ・クロス氏は「従業員同士が互いに瞬時にアクセスできること」「グループ内でどのように仕事が進められているか、グループ内の関係性がどのようなものかを経営幹部が確認できるようにすること」が重要だと考えている。Connected Commonsに参加する企業の中には、人的資本管理(HCM:Human Capital Management)システムを導入している企業もある。
ハイブリッドワーカーは一般的にオンラインでコミュニケーションを取る。そのため人事部門の担当者は従業員に対し、従業員同士で共同作業をするためのツールを提供する必要がある。
ITコンサルティング会社Thoughtworksの従業員は世界各地に住み、フレックス制で働いている。「ハイブリッドワークを支援する上でITが重要な役割を果たしている」と同社の北米担当最高経営責任者(CEO)、クリス・マーフィー氏は説明する。かつては対面で実施していたコミュニケーションがリモートに置き換わる中、ハイブリッドワーカーはSlackやZoomなど複数のコミュニケーション手段を必要としている。
テレワークでもうまく利用できる研修ツールや開発ツールも必要だ。マーフィー氏によると、Thoughtworksは従業員が自身の成長の過程を記録するためのツールを自社開発し、使っている。このツールで成長の記録を振り返ることで、オフィスワークの従業員もテレワークの従業員も、自分の強みを考えやすくなる。目標を達成するための計画を立て、その成長目標を人事部門と共有することもできる。
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