CDNは1990年代に登場して以来、Webの進化に合わせて変わってきた。Webコンテンツの多様化、クラウドサービスの拡大などが背景にある。CDNの変遷と最新機能を紹介する。
「コンテンツデリバリーネットワーク」(CDN)がWebの変遷に応じてその役割を拡大してきたことは意外と知られていない。CDNの基本は、高速のデータ伝送と低遅延化によってコンテンツ配信に要する時間を短縮し、エンドユーザーの顧客体験を向上させることにある。CDNが目指すこの根本は以前と変わらないが、機能は一段と多彩になっている。
CDNの目的を説明した第1回「いまさら聞けない『CDN』 高速コンテンツ配信のメリットと使わないリスク」に続き、本稿はCDNがWebの進化に応じてどのように変わってきたのか、歴史と2022年現在を紹介する。
CDNが登場した1990年代後半、コンテンツは「GIF」や「JPEG」形式のファイルで構成するWebページが中心だった。CDNサーバはそうした静的コンテンツを保存し、コンテンツの配信元サーバに代わってWebページのデータをエンドユーザーに配信していた。これにより、エンドユーザーへのコンテンツ配信にかかる時間の短縮だけでなく、配信元企業のデータセンターや、経由するWANなどのインフラに掛かる負荷の軽減も実現した。
企業の経験豊富なIT管理者は、自社データセンターの外部に重要なデータを置くCDNを簡単には信用しなかった。ITアウトソーシング市場が成長したことで、IT管理者の認識は一変した。「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」「Google Cloud Platform」といったクラウドサービスが大成功を収めたことがきっかけだ。それによってCDN市場は拡大することになった。
音声や動画などのコンテンツに人気が集まり出すと、そうしたコンテンツを配信するためにCDNも進化した。企業がクラウドサービスなど社外のデータセンターを積極的に利用するようになり、CDNはさらに機能を追加した。具体的には、Webサーバの負荷を分散する「アプリケーションデリバリーコントローラー」(ADC)などのロードバランシング機能、「Webアプリケーションファイアウォール」(WAF)をはじめとするセキュリティ機能などだ。
こうした過去があり、2022年現在のCDNのサービスや機能は多彩だ。機能特化のCDNの中には、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)管理、各種のコンテンツセキュリティ、デジタル著作権管理、ジオブロッキング(位置情報に基づくアクセス管理)などを提供するサービスがある。CDNの基本機能は静的コンテンツ(常に内容が変わらないコンテンツ)のキャッシュ(一時保管)だ。それに付随してキャッシュのパージ(消去)やリフレッシュ(更新)を提供するサービスもある。
セキュリティ特化系のCDNは、例えばDDoS攻撃(分散型サービス妨害)やbotを介した攻撃からの保護など、高度なセキュリティ機能を提供している。
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