社会情勢が不安定な状況でサプライチェーンにダメージを受けた企業が、調達品の供給源や製造拠点の移動を検討するのは自然な流れだ。こうした動向は今後加速するのか。IDCに聞いた。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の影響で、さまざまな企業がサプライチェーンに打撃を受けている。中編「有事に適応できる企業、できない企業の違い 『レジリエンス』を高める秘策は」に続き、本稿はサプライチェーンリスクの軽減に向けて調達品の供給源や製造拠点を見直す際の考え方について、調査会社IDCでアナリストを務めるサイモン・エリス氏に話を聞いた。
―― リショアリング(拠点を国外から国内に戻すこと)やニアショアリング(拠点を近隣のより適切な場所に移すこと)といった“脱オフショアリング”を実施して、調達品の供給源や製造拠点を最終市場に近づける動きは進むのでしょうか。
エリス氏 リショアリングが大規模に実施されるとは考えにくいし、そのような条件反射的な対処にとらわれるべきではない。リショアリングが意味を成さない根本的な理由があるからだ。何よりもまず、需要がグローバルに存在するなら、供給もグローバルに実施する必要がある。米国には、何十年も自国で製品を製造していない産業が数多く存在する。企業が半導体の製造工場を自分の国に建設したくなる気持ちは理解できる。だが、そのための知識はあるだろうか。製造に携わる熟練労働者や、工場建設に投資するベンチャーキャピタルは存在するのだろうか。私たちはこれら全てを、何年も前から国外に依存している。
―― リショアリングやニアショアリングの代わりに、メーカーがサプライチェーンをよりコントロールできるようにするには、何をすればよいのでしょうか。
エリス氏 私が関心を持っているのは、調達を地理的な観点で見るのではなく、垂直統合の観点から見ることだ。例えば製造業は特定の調達品を「自社のビジネスに欠かせないもの」と判断し、自社に取り戻そうとする可能性がある。その場合は、自社製造に切り替えるか、製造しているサプライヤーを買収するだろう。こうした動きが大規模に起こるとは思わないが、ある程度増えてくるのかどうかは注目に値する。これはリショアリングやニアショアリングとは異なる動きだ。
―― すでにそのような事例があるのでしょうか。
エリス氏 うわさは幾つかある。例えば複数の自動車メーカーが、共同で半導体の生産設備を買収する交渉を進めているという。そうすれば彼らは半導体の生産能力を持てるようになる。生産能力に余剰が生じれば、市場で供給不足が続いている間、半導体を市場に売り込むことができる。事実、米国大手自動車メーカーFord MotorやGeneral Motorsは半導体メーカーとの関係強化を進めている。もしあなたの会社がFord Motorと競合関係にあるならば、余っている半導体を同社から仕入れたいとは考えないかもしれない。そうでないなら買わない理由はないはずだ。
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