WORMに「プラズモニックストレージ」という新発想 Blu-rayを用なしに?新種ストレージの台頭はいつになる?【第2回】

光学ストレージの新種として開発が進む「プラズモニックストレージ」。構造化データも非構造化データも増加が見込まれる中、この新種ストレージ技術から得られる利点とは。

2022年08月01日 08時15分 公開
[Robert SheldonTechTarget]

関連キーワード

データ | ストレージ


 「プラズモニックストレージ」は、金属表面における自由電子の集団振動である「表面プラズモン」をデータ保存に応用する。光学ストレージの容量や読み出し速度を大幅に高める技術として期待がかかる。パデュー大学(Purdue University)によれば、「WORM」(Write Once Read Many:書き込み1回、読み込み複数回)をはじめ応用可能な分野はさまざまだ。どのような利点が見込めるのか。

Blu-ray代替を狙う「プラズモニックストレージ」とは?

会員登録(無料)が必要です

 表面プラズモンによって色を生成し、それをバイナリデータに変換するのがプラズモニックストレージの基本的な仕組みだ。色を生成するナノアンテナ(ユニットセルとも)の向きによってさまざまな色を生成する。これによって限られた領域により多くのデータを保存可能になる。

 光を識別する「光スペクトラムアナライザー」は、ディスク(記録媒体)が回転するときに色を読み取り、それをバイナリデータに変換する。複数の光スペクトラムアナライザーを組み合わせることで、読み取り速度が格段に向上する。

 プラズモニックストレージの応用が期待できるのは、読み取り専用のストレージを代替することだ。例えば既存のストレージとしては、オーディオやビデオの記録用に使われている光学ストレージ「Blu-ray Disc」がある。

 Blu-ray Discは、読み取り専用のデータをディスクに記録する。プラズモニックストレージは、このBlu-ray Discと似た方法で読み取り専用のデータを提供できることに加え、大容量化と読み取りの高速化を実現できる可能性がある。こうした特性は、特にビデオコンテンツ向けとして有効だ。別の言い方をすれば、プラズモニックストレージはWORM向け光学ストレージの、読み取り性能と容量を大きく改善できる可能性を秘める。

 その他、プラズモニックストレージは光学ストレージの一般的な特徴である耐久性も兼ね備えるので、データを長期保存するアーカイブ用として使える。機械学習、予測分析をはじめ大量のデータを活用する用途向けとしても活用できる可能性がある。

 以上の特徴をまとめると、プラズモニックストレージはさまざまな構造化データと非構造化データの長期保存に適している。データを高速に読み取れる特性は、企業にとっては時間の節約になる。例えば法令順守のために長期保存しておいたデータを取り出す際や、サイバー攻撃を受けてデータを復元する必要の生じた際に、データ読み取りの高速性が生きる。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

IOPSが5倍に向上&コストも80%削減、エクシングが選んだ大容量ストレージとは

カラオケ業界が直面するデータ増に対応すべく多くのストレージを試し続けた結果、4社27台の製品のメンテナンスに悩まされていたエクシング。この問題を解消すべく、同社は大容量かつコスト削減効果に優れた、新たなストレージを導入した。

製品資料 プリサイスリー・ソフトウェア株式会社

データソート性能向上でここまで変わる、メインフレームのシステム効率アップ術

メインフレームにおけるデータソート処理は、システム効率に大きく影響する。そこで、z/OSシステムおよびIBM Zメインフレーム上で稼働する、高パフォーマンスのソート/コピー/結合ソリューションを紹介する。

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

従来ストレージの約8倍の容量を確保、エルテックスが採用したストレージとは

ECと通販システムを統合したパッケージの開発と導入を事業の柱とするエルテックスでは、事業の成長に伴いデータの容量を拡大する必要に迫られていた。そこでストレージを刷新してコスト削減や可用性の向上などさまざまな成果を得たという。

製品資料 日本ヒューレット・パッカード合同会社

空冷だけではなぜ不十分? データセンターの熱負荷対策をどうする

CPUやGPUの性能向上に伴い、データセンターでは今、発熱量の増加にどう対応するかが課題となっている。特に高密度なサーバ環境では、従来のファンやヒートシンクに頼るだけでは熱管理が難しい。こうした中、企業が採用すべき手段とは?

製品資料 Dropbox Japan株式会社

ファイルサーバをアウトソーシング、「クラウドストレージサービス」の実力

中堅・中小企業の中には、IT担当者が社内に1~3人しかいないという企業も少なくない。そのような状況でも幅広い業務に対応しなければならないIT担当者の負担を減らす上では、ファイルサーバをアウトソーシングすることも有効だ。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...