ユーザー企業がクラウドサービスで利用するデータをオンプレミスインフラに戻す理由は、クラウドサービスの利用料金の節約だけではない。企業のクラウドサービスの利用方法に生じつつある変化とは。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を機に、Amazon Web Servicesの同名サービスやMicrosoftの「Microsoft Azure」、Googleの「Google Cloud Platform」などのクラウドサービスを導入したユーザー企業は少なくない。こうしたユーザー企業の間では、コスト削減のために、クラウドサービスで扱っていたデータをオンプレミスインフラに戻す動きがある。その理由はコスト削減だけではない。
「2022年に入り、予想より大きくなったクラウドサービスのコストを削減しようとするユーザー企業が増えつつある」。ハイブリッドクラウド管理サービスを手掛けるInvoltaのクラウドサービス担当バイスプレジデント、ジョッシュ・ホルスト氏はこう話す。クラウドサービスからオンプレミスインフラへの回帰には、コストの削減だけではなく、アプリケーションの実行速度の短縮や、オンプレミスインフラでデータを保管可能にする狙いもある。
Involtaのユーザー企業には「ワークロード(アプリケーション)をコロケーション施設に移し、クラウドサービスをバックアップ用のインフラとして使いたい」という要望もあるという。「特に製造業と金融業のユーザー企業は、パンデミック中にクラウドサービスに移したワークロードをオンプレミスインフラへ戻すことに積極的だ」とホルスト氏は話す。
VoIP(Voice over IP)ベンダーの4Voiceは、AWSをインフラにする電話システムを中小企業向けに提供していた。「この一年は、ユーザー企業の多くが電話システムをクラウドサービスに残し、ボイスメールと文字起こしのシステムをオンプレミスインフラに移すことを希望した」と、4VoiceのCEO、アムルース・ラクシュマン氏は語る。
ユーザー企業のクラウドサービスの利用方法は変化しつつある。ただし米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)は、クラウドサービスからオンプレミスインフラへの全面的な移行は起こらないと推測している。
クラウドサービスとオンプレミスインフラのコストの違いを踏まえて、アプリケーションのアーキテクチャをハイブリッドクラウド(クラウドサービスとオンプレミスインフラの組み合わせ)に適した形に変える動きがあるという。ESGはアプリケーションインフラのモダナイゼーション(最新化)に関する最近の調査報告で、クラウドサービス、オンプレミスインフラ、コロケーション施設のどれを選ぶかは「アプリケーションごとの選択になる」と指摘する。
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