公共放送局のBBCはDXの推進を表明し、事業と組織を再構築し始めている。ただし「その計画遂行能力には課題が残る」と英国議員は懸念を示す。どういうことなのか。
英国会計検査院(NAO:National Audit Office)が2022年12月に公開した報告書「A digital BBC」によると、公共放送局BBC(英国放送協会)は視聴者の将来的な需要に応えられるように、組織をデジタルファースト型に再構築した。それに先立つ同年5月には、デジタルトランスフォーメーション(DX)計画を発表済みだ。ただし、同局の計画遂行能力には課題があるという。
BBC会長のティム・デイビー氏はDX計画発表の際、文化的、経済的、社会的に大きなメリットをもたらし、グローバルリーダーとなるデジタルメディア組織を構築すると宣言。「デジタルファーストでコンテンツを制作し、真実の追求、公平性、卓越した創造性、独立性によって突き動かされる組織を目指す」と発言した。
これらの目標を達成するためにBBCは、動画配信の世界で通用するコンテンツに資金を再配分する方針だ。テレビ、ラジオといった従来の放送事業については「シビアな選択」をし、同時配信・見逃し視聴サービス「BBC iPlayer」といったデジタルサービスに「もっと投資する」とデイビー氏は述べる。
NAOが報告書を公開した数週間後、英国公会計委員会(PAC:Public Accounts Committee)はBBCのデジタル戦略を達成する能力に疑問を呈した。2023年1月にPACが実施した口頭弁論会の議事録によると、複数の議員が“ある懸念”を表明している。それはBBCがデジタル施策の拡充に伴って、受信料支払者の個人データを取得する機会を大幅に増やした場合に、同局が過去に表明した個人情報保護の保証を先延ばしすることがないかどうかだ。
デジタル化の進展に伴い、個人情報の利用機会は広がる。BBCが個人情報の取得、保存、保護、利用の透明性においてベストプラクティスを満たさない場合「大きなレピュテーション(風評)リスクにさらされる」と、NAOの報告書は警告している。
第2回は、BBCのDXへの姿勢に関して波紋を広げた、同局幹部の発言の真意を探る。
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