企業向けストレージとして用途が広がる「SSD」。利用機会が増えるほど、気になるのはコストをいかに抑制するかだ。その判断に役立つ、ごく簡単な考え方を紹介する。
企業の保有データ量が増大するトレンドが顕著な昨今、データ保管を担う「SSD」をより安く調達できるに越したことはない。ベストな判断を下すには当てずっぽうではなく、先を見通せるロジックを根拠にすることが大切だ。ごく簡単な考え方を紹介する。
SSDの価格は「NAND型フラッシュメモリ」の価格に連動する傾向がある。ブローカー経由で取引されるNAND型フラッシュメモリの市場を指す「スポット市場」は、ベンダーにとっては余剰在庫を清算する機会になる。需要が増えたものの正規のルートでは欲しい物が手に入らないバイヤーは、スポット市場で余剰在庫を購入できる。ブローカーはバイヤーとベンダーをマッチングし、交渉を手助けする。
NAND型フラッシュメモリの売上高全体において、スポット市場の占める割合は5%以下であると想定される。市場全体に占める割合は小さいが、スポット市場は知名度がある。スポット市場の価格は、NAND型フラッシュメモリの市場動向を把握するための指標としてよく使われる。ただしスポット市場の価格は、市場価格を正確に反映しているわけではない。
スポット市場の価格は、コントラクト市場(ベンダーとの正規の取引市場)の価格とは異なる。スポット市場の価格は需要の変化に敏感に反応するので、価格の変動はコントラクト市場の値動きを誇張したものとなる。そのため、この価格を適正価格として完全に信用することはできないが、コントラクト市場の価格の先行指標として参考になることは確かだ。スポット市場の価格が上昇または下降した場合、コントラクト市場の価格は変動幅がより小さい形で追従することがよくある。
半導体関連企業が加盟する組織、World Semiconductor Trade Statistics(WSTS:世界半導体市場統計)が公表する数値によると、2022年後半にはNAND型フラッシュメモリの1GB当たり価格が、7セント弱から3セント程度まで大幅に下落した。下落率は鈍化しつつあるものの、直近の市場環境を見る限り、2023年に価格が上昇する可能性は低い。
2020年代に入ってからは、米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ(金利引き上げ)、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による中国の厳格なロックダウン(都市封鎖)があった。ロシアによるウクライナ侵攻も経済的影響を生んでいる。そうした中でNAND型フラッシュメモリ市場は、企業向け市場だけではなくコンシューマー向け市場も打撃を受けている。
劇的に安くなることは考えにくいが、NAND型フラッシュメモリの価格が下がる傾向にあるのは事実だ。
第3回は、下落するSSD価格に変化が訪れるタイミングを考察する。
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