クラウドをやめる「脱クラウド」の失敗時に焦らないための“あの準備”とは?「脱クラウド」8つのステップ【第4回】

「脱クラウド」を決定し、オンプレミスインフラへとスムーズにアプリケーションを移行させるためには、何に注意すればよいのか。脱クラウドのトラブル回避に必要な検討事項を説明する。

2023年05月10日 10時00分 公開
[Chris TozziTechTarget]

 クラウドサービスで稼働させているアプリケーションをオンプレミスインフラに戻す「脱クラウド」を決断したら、段階を踏んで移行を進める必要がある。移行に着手する前に、どのような準備が必要なのか。脱クラウドに必要な8つのステップのうち、5つ目から8つ目を説明する。

5.「緊急事態」に備える

 脱クラウドを開始する前に、停電やネットワーク障害など、作業を中断させる可能性のある緊急事態に備える。移行に失敗したり、予想以上に時間がかかったりする場合に備えて、移行前の状態に戻すロールバックの計画を策定することも大切だ。

 オンプレミスインフラへのアプリケーション移行が完了するまでの間、クラウドサービスにホストした従来のアプリケーションのVMは、稼働させ続けることになる。その場合でも綿密にロールバック計画を立てることで、予定通りに移行が進まない場合に慌てずに済む。

6.「移行」を開始する

 データとアプリケーションをバックアップしたら、アプリケーションの移行作業を開始する。ほとんどの場合、データとアプリケーションのイメージファイルを、ネットワーク経由でオンプレミスインフラに転送できる。データ量が多い場合は、Amazon Web Services(AWS)の「AWS Snowball」といったデータ転送サービスの使用を検討する。

 移行作業中もクラウドサービスでアプリケーションが稼働している場合、新たに生じたデータを移行先に同期させることが必要になる。フリーソフトウェアの「rsync」といったデータ同期ツールを使うことで、データの素早い同期が可能だ。

7.「移行後」を検証する

 データとアプリケーションのオンプレミスインフラへの移行が完了したら、アプリケーションを本稼働させる前に、要件通りに動作するかどうかを確認する。データの破損がないことや、アプリケーションの挙動が移行前と一致することを確認するとよい。

 負荷テストをして、アプリケーションの本稼働時と同等の大きさのデータを処理できるかどうかを確認することも大切だ。セキュリティツールのスキャン機能は、移行作業中に見落とした脆弱(ぜいじゃく)性や設定ミスの発見に利用できる。

8.「インフラ」を切り替える

 オンプレミスインフラに移行させたアプリケーションが全ての検証に合格したら、アプリケーションへの全てのリクエストを、オンプレミスインフラに転送する。その後、クラウドサービスにホストしたアプリケーションを止める。この際にDNSレコード(ドメイン名とIPアドレスを対応させるためのデータ)を更新して、アプリケーションの正しいインフラを指定するのが一般的だ。オンプレミスインフラにデータを転送するために、ロードバランサーやファイアウォールの設定変更が必要になる場合がある。


 第5回は、アプリケーションのインフラ移行手法の一つである「カナリアリリース」を説明する。

TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス

米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。

ITmedia マーケティング新着記事

news061.png

高齢男性はレジ待ちが苦手、女性は待たないためにアプリを活用――アイリッジ調査
実店舗を持つ企業が「アプリでどのようなユーザー体験を提供すべきか」を考えるヒントが...

news193.jpg

IASがブランドセーフティーの計測を拡張 誤報に関するレポートを追加
IASは、ブランドセーフティーと適合性の計測ソリューションを拡張し、誤報とともに広告が...

news047.png

【Googleが公式見解を発表】中古ドメインを絶対に使ってはいけない理由とは?
Googleが中古ドメインの不正利用を禁止を公式に発表しました。その理由や今後の対応につ...