SSDの容量が突如として超大容量化したら、ストレージの市場に与える影響は極めて大きくなる。そうした事態が将来に起きることは見込まれていたが、それがすぐ間近に迫っている状況が分かった。何が起きるのか。
データ保管の安さを重視する企業は、SSDではなくHDDを選ぶ傾向にある。SSDとHDDが20TBや30TBで大容量化を競い合っているうちは、この傾向は大きく変わらないと考えてよい。興味深いのは、その容量のはるか上を行くSSDが登場する見込みであることだ。何が起きるのか。
SSD市場では、30TBなどの大容量を持つ製品が登場している状況だ。今後の進化は規模感が違う。ストレージシステムベンダーのPure Storageは、2026年までに容量300TBのSSDを開発する計画を明かした。これはSSDとHDDの両ストレージの市場に大きな影響を与える可能性がある。
ほとんどのストレージシステムベンダーは、SSDやHDDなどのストレージデバイスを汎用(はんよう)製品だと見なし、ストレージシステムにおける技術革新をソフトウェア中心で進めている。そうした中でPure Storageが打ち出したのは、デバイスを重視した技術革新だ。同社独自設計のモジュール(SSDに相当)である「DirectFlash Module」(DFM)で、300TBを目指す。このやり方は異色だ。
「ストレージにおける一般的な技術革新の真逆を行くようなものだ」と、米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)のプラクティスディレクター、スコット・シンクレア氏は語る。Pure Storageはその戦略によって、競争優位に立つことができるとシンクレア氏はみる。
SSDの容量を大幅に増やすことは、SSD市場だけではなくHDD市場の変化も招く可能性がある。一般的に、SSDはHDDよりも容量単価が高額になる傾向にあるため、より低廉なことを理由にHDDを選ぶ企業は少なくない。だが300TBという容量になると話は別だ。HDDを選んでいた企業が、「コストが膨らんだとしても、HDDよりもデータ読み書きが高速になるSSDに新たに投資してみよう」と考えるきっかけになり得る。
300TBのSSDへの投資が、期待するほどには進まないとみる専門家もいる。「低廉さを重視してきた企業に『HDDから移行すべき時が来た』と確信させるほど十分な導入実績が、すぐに出るとは考えにくい」。調査会社Evaluator Groupのシニアストラテジスト兼アナリストのランディ・カーンズ氏はそう指摘する。コストを気にする企業は、よほどSSDが優位な状況にならない限り、あくまでもより安いストレージを選択するのだ。
中編は、容量単価や拡張性の観点から300TBのSSDの影響を探る。
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