SSDにDRAMを搭載しないことで幾つかの利点が見込めるものの、データセンターはその活用には消極的だった。ただし以前とは状況が異なる。DRAMをなくす利点を踏まえて考えてみよう。
SSDにはDRAM(Dynamic Random Access Memory)を搭載する製品と、搭載しないDRAMレスの製品がある。DRAMを内蔵するのが一般的なSSDの設計だが、昨今はDRAMを搭載しない設計にも関心が向きつつある。その背景には何があるのか。
DRAMはSSDにおいて、NAND型フラッシュメモリへのデータ読み書きに関するさまざまな制御を担う。内蔵DRAMを増やせば、データの読み書き速度といったSSDのパフォーマンスは向上しやすくなるが、価格と消費電力も上昇しやすくなる。ホスト(コンピュータ)とSSDの動作が互いに邪魔をし合い、システム全体のパフォーマンス低下を招く可能性があることも、SSDにDRAMを搭載する場合の注意点の一つになる。
本来はSSD内蔵のDRAMが担う処理を、ホストのメモリの一部で置き換えるのが、DRAMレスSSDの仕組みだ。この仕組みは「HMB」(Host Memory Buffer)と呼ばれる。HMBによってホストとSSDの動作をより細かく制御することで、双方の動作のタイミングを合わせて動作の無駄を出しにくくすることが可能になる。
ユーザー企業は、SSDのアーキテクチャに応じてアプリケーションの動作をチューニングすることで、DRAMレスSSDのパフォーマンスを最大限に引き出せる。特にハイパースケーラー(大規模なデータセンターを運営する事業者)は、ほぼ全てのアプリケーションの動作を内製で調整しているため、HMBを取り入れることは合理的な判断になる。
ハイパースケーラーは、制御機能のほとんどを取り除いたSSDの活用に乗り出している。例えば検索エンジンを手掛けるBaiduがその一社だ。
DRAMレスSSDに着目するのはBaiduのようなハイパースケーラーばかりではない。SSDベンダーだったFusion-ioは、10年以上も前(本稿執筆時点は2023年)に、汎用(はんよう)インタフェース規格「PCI Express」(PCIe)を使用するDRAMレスSSDのビジネスを開始した。その後、SanDiskがFusion-ioを買収し、そのSanDiskをWestern Digitalが買収した。
Fusion-ioがその仕組みを発表した当初、ユーザー企業の関心はあまり高まらなかった。理由の一つは、DRAMレスSSDはホストのDRAMの一部を借りるため、ホストが使用するメモリ容量を侵食する可能性があるという点だ。SSDからホストを起動できないため、あらかじめホストが起動しているかどうかに左右される点も、DRAMレスSSDの懸念事項だった。
DRAMレスSSDの仕組みは進化しており、ホストとSSDの起動順序に関する問題は克服され始めた。ホストのDRAM使用量に対する考え方も以前とは異なり、DRAMレスSSDを活用する機運が高まりつつある。
第3回は、DRAMレスSSDの利点と注意点をより深く紹介する。
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