障害者の働きやすさを高めることは、コミュニケーションツールの「アクセシビリティー」向上の主な目的だ。ただしアクセシビリティー向上の恩恵を受けるのは障害者だけではないという。どういうことなのか。
企業がコミュニケーションツールの「アクセシビリティー」(利用しやすさ)を積極的に高める意義は、障害のある従業員が、自ら配慮を求めずに済むようにすることだ。従業員が自分の障害に言及することに不安を感じている場合は、特にそうだと考えられる。
人とのコミュニケーションに難しさを感じる「自閉スペクトラム症」(ASD)、注意の持続や衝動性の抑制に難しさを感じる「注意欠陥・多動症」(ADHD)、文字の読み書きに難しさを感じる「ディスレクシア」(発達性読み書き障害)――。こうした障害の大半は「目に見えない」と、ライフサイエンス事業を手掛けるVerily Life Sciences(Alphabet傘下)のアクセシビリティー責任者、テイマー・サビア氏は指摘する。周囲が気付きにくいからこそ、企業は先手を打ってアクセシビリティー向上を進めることが大切だ。
アクセシビリティー向上のメリットを享受できるのは、実は障害者など特定の従業員だけではない。
例えば字幕機能は、聴覚に障害のある従業員はもちろん、その言語の母語話者ではない従業員にも利点がある。耳で話を聞くと同時に字幕も見れば、内容の理解を深めやすくなるからだ。「さまざまな人が恩恵を受けられると分かれば、アクセシビリティー向上に協力する従業員が増える可能性がある」とサビア氏は期待を込める。
VMwareでアクセシビリティー担当を務めるシェリ・バーン=ヘイバー氏は、車椅子の利用者だ。バーン=ヘイバー氏は、コミュニケーションツールのアクセシビリティー向上を、道路における縁石の切り下げ工事に例える。縁石の切り下げをするのは、主に車椅子利用者が歩道に昇り降りしやすくするためだ。加えてベビーカーを押したり、荷物を運んだりする人にもメリットをもたらす。「本来は障害者のための取り組みが、大勢の人をハッピーにする」と同氏は言う。
第5回はコミュニケーションツールのアクセシビリティーを向上させる手段として、OpenAI「ChatGPT」をはじめとした「ジェネレーティブAI」(生成AI:テキストや画像などを自動生成するAI技術)の可能性を探る。
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