企業が新たなデータを保管し続ける中で、独自の立ち位置を築いてきたストレージが「テープ」だ。専門家によれば、テープの代替になり得るストレージは、現状では見当たらない。テープ独自の利点とは。
企業がさまざまなデータを生成したり、活用したりする中で、ストレージの需要が減少する気配はない。専門家は、特に磁気テープの規格「LTO」(Linear Tape-Open)のストレージが、今後も使われ続けると予測する。そうみる背景には何があるのか。
調査会社IDCのアナリスト、フィル・グッドウィン氏は「企業がテープから他のストレージに移行するほどの経済的な変化は、現状のところは見えていない」と語る。テープの利点の一つは、「SSD」や「HDD」に比べて容量単価を抑えやすい点だ。企業は、依然としてデータ保管コストの抑制を重視する傾向にある。
例えばテープのユーザー企業であるマーケティング会社Image Building Mediaは、今後もテープの使用をやめるつもりはない。「データ保存とバックアップにおけるテープの有用性は、時間の経過と共に増すばかりだ」。同社のバイスプレジデント兼COO(最高執行責任者)のアラン・マクナブ氏はそう述べる。昨今はデータの長期保存先としてクラウドストレージの利用が広がっている状況だ。それでもマクナブ氏は「オンプレミスのテープを使用する利点にも目を向けるべきだ」と強調する。
この先「テープが有用だ」という認識が崩れる可能性はゼロではない。ただし専門家は、それは起こらないとみている。経済が減速すれば、発生するデータ量に影響する可能性はあるものの、データの保管が不要になる事態は考えにくい。データがある限り、企業はそれをコスト効率良く保存し、保護しなければならない。
「“破壊者”となる新種のストレージが登場しない限り、テープの利用が終わることはない」。米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)のアナリスト、クリストフ・バートランド氏はそう予測する。
仮に新しいストレージが登場するとすれば、そのストレージは容量やコストにおいてテープと同等以上に優れていなければ、テープの代替にはなり得ない。テープが、ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)対策として使われていることも忘れてはいけないポイントだ。「システムやネットワークから物理的にデータを切り離して、攻撃者の手が及ばないようにできることがテープの利点の一つになっている」(バートランド氏)
テープは、データを記録する「テープカートリッジ」と、データの読み書きをする「テープドライブ」が分かれている。データを使用するとき以外は、テープカートリッジを誰の手にも届かない安全な場所で保管することができるのは、テープ独自の利点だと言える。攻撃によって本番データが使用できなくなった場合は、テープカートリッジからデータを取り出して復旧させることができる。
後編は、テープにとっての新たな用途になる可能性のある活用法を取り上げる。
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