コロナ禍を契機に加速したIT人材の売り手市場。高度なスキルを持つ人材の獲得に一石を投じるのが「スキルベースの採用」だ。企業の採用担当者はこの採用手法をどう見るのか。
調査会社Gartnerは2022年10月、年次カンファレンス「Gartner ReimagineHR 2022」を開催した。そこで話題の一つとして挙がったのが、IT部門の従業員の離職率だ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)を契機として、企業における業務のデジタル化や効率化の取り組みが広がったことで、IT人材の流動性が高まり、高度なスキルを持った人材の確保が困難になりつつある。
IT人材の採用と定着を図るための対策として、調査会社Gartnerで調査部門のバイスプレジデントを務めるリリー・モク氏はスキルベースの採用の導入を挙げる。
学歴や職歴ではなく、採用候補者のスキルに基づいて選考するのがスキルベースの採用だ。サウジアラビアの金融機関Bank Albiladで最高人事責任者を務めるハイサム・アルメダイニー氏は、モク氏が紹介するスキルベースの採用に同意する。
IT人材への需要が高まりつつある中で、「人材を定着させ、モチベーションを高められる採用や報酬を提供するための仕組み作りは容易ではない」とアルメダイニー氏は話す。一方で、スキルベースの採用という考え方には「期待が持てる」と感じたという。スキルベースの採用を進めることで、「従業員が昇進だけを追い求めることから、キャリアの成長を追い求めるようになる見込みがある」と同氏は確信する。
メキシコの大手食品メーカーGrupo Bimboでピープルアナリティクスグローバルマネジャーを務めるグスタボ・ペレス・パディージャ氏は、Gartner ReimagineHR 2022に出席した。パディージャ氏は、企業がIT人材の採用で抱える課題の一つは「望ましいスキルを持った人材をどのように確保するか」だと述べた上で、次のように語る。「離職率の改善には、競争力を持つ給与を従業員に支払うことと、新しい技術の習得や既存のスキルの向上といった、従業員の新たな取り組みを支援する体制が求められる」
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