無線LANのQoS(サービス品質)要件は、アプリケーションやネットワークを提供する場所によって異なる。無線LANのQoS確保方法を解説する技術レポートを公開した業界団体WBAは、何を推し進めているのか。
無線LANの通信遅延を抑えてQoS(Quality of Service:サービス品質)を向上させることは、通信事業者やストリーミング配信サービスを手掛ける企業だけではなく、企業や公共施設、一般家庭などでのネットワーク管理でも重要になる。そうした際に参考にできる技術レポートとして、無線LANの業界団体Wireless Broadband Alliance(WBA)は「E2E QoS Improvement:Optimizing QoS Over Wi-Fi」を公開した。同レポートは、家庭用、企業用、公共用の各用例において、無線LANのQoSを向上させる方法を、用例ごとのKPI(重要性能評価指標)を示しながら説明している。
レポートは、試験から得られた“2つの重要な課題”に触れている。1つ目は、無線LANにつながるアプリケーションのパフォーマンスと信頼性、ユーザーエクスペリエンス(UX:ユーザーの体験価値)を改善するための定量化だ。2つ目は既存のQoSメカニズムの強化や、全く新しいQoSメカニズムが必要になる可能性のある、無線LANのパフォーマンスを低下させるボトルネックの特定だ。これらの課題の解決に向けてWBAは、IETF(Internet Engineering Task Force)、米国電気電子学会(IEEE)内のワーキンググループ「IEEE 802.1」や「IEEE 802.11」、WFA(Wi-Fi Alliance)などの標準化団体と協力し、QoS向上のための既存技術の強化や、新技術の開発を実施する計画だ。
そのためにWBAは今後の取り組みを定義し、その概要をレポートで説明している。例えばWFAが策定したQoSの標準に基づき、無線LAN内のトラフィック(ネットワークを流れるデータ)を優先順位付けする利用シナリオを概説している。
WBAが計画している作業は主に以下の3つだ。
今回のレポートの公開について、WBAのCEOティアゴ・ロドリゲス氏は「アプリケーションにはそれぞれ独自のQoS要件があり、この多様性が無線LANを扱う企業の課題となってきた」と述べる。その上でロドリゲス氏は、今回発表した技術レポートが「強化されたQoSの仕組みを用いて優れたUXを提供するために、各分野のアプリケーションに必要な帯域幅(通信路容量)の確保や優先順位付けを概説するもの」だと説明する。
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