ネットワーク回線を契約する時は、サービスプロパイダーが提示するSLAをよく確認する必要がある。障害時の返金額も重要だが、SLAはサービス品質を測る参考にもなる。
ユーザー企業が回線サービスのサービスプロパイダーと契約する時、一般的にはサービスプロパイダーとの間で、サービスの内容や品質について合意するSLA(サービスレベル契約)を結ぶ。ネットワーク回線に障害が発生した時や、帯域幅が不足した時はSLAに基づいてサービス料金の一部が返金される可能性がある。
しかし、ユーザー企業がサービスプロパイダーを選ぶ際、返金額を重視することは珍しい。むしろSLAによって保証されるサービスのレベルを確認することで、回線サービスで期待できる品質を確認する。だが、ここに落とし穴が存在する。SLAがユーザー企業目線でのサービス品質を反映した形で記述されているとは限らない。
SLAはサービスプロバイダーとユーザー企業との間で結ばれる契約であり、インフラサービスの品質に対する期待値の指標となる。
回線サービスの場合は、サービスプロパイダーがデータ伝送速度をはじめとしたパフォーマンスをどのように測定するかを定義している。パフォーマンスのレベルが満たされていない場合の罰則や、サービスクレジット(SLAに違反した場合の返金)の処理方法について記載されている。
サービスプロバイダーはSLAで合意した数字を達成できなかった場合、サービスクレジットを提供する。企業は、障害やネットワークのパフォーマンスへの影響に基づいて、これらのサービスの価値がどのように減少したかについて交渉する。
残念ながらサービスプロパイダーは、回線サービスのSLAとして、
といったネットワークの個別の要素を提示することが珍しくない。ユーザー企業もこうした要素に注目する傾向がある。だが本来は、ネットワークがエンドツーエンドで利用できる稼働時間や、障害発生時の平均修復時間(MTTR)などに注目すべきだ。
SLAで規定した内容が満たされなかった場合の罰則を設けることで、サービスプロバイダーはユーザー企業の期待通りのサービスを提供できるように自らを動機付ける。SLAは、ユーザー企業にとってパフォーマンスの問題を確認するための切り口にもなる。
近年のサービスプロパイダーはネットワークのサービスに加えて、クラウドサービスやマネージドセキュリティサービスなどを提供するようになっている。ポートフォリオが複雑になるのに応じて、SLAを再構成するサービスプロパイダーも出ている。ネットワークのパケットロスやレイテンシといった個別の指標よりも、ネットワーク全体での稼働時間や網内平均遅延時間(設備区間内のパケット往復転送時間)を提示するようになった。
そのようなサービスプロパイダーは例えば、約99.999%のネットワーク可用性を提供することを約束する。これは、通常1年間、ユーザー企業がネットワークの構成要素やサービスにアクセスできる時間の割合を意味する。
次回はユーザー企業が回線サービスのSLAにおいて何を確認するべきかを解説する。
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