「Wi-Fi」とは違う無線規格「Li-Fi」だけの利点とは?第2のWi-Fi「Li-Fi」を学ぶ【後編】

光を利用する無線技術「Li-Fi」が2023年に標準化され、普及の道筋が見えてきた。他の無線通信規格と比較して、Li-Fiにはどのような利点と課題があるのか。

2025年01月09日 05時00分 公開
[Lee BadmanTechTarget]

 光を利用する無線技術「Li-Fi」(Light Fidelity)が2023年に標準化された。Li-Fiには電波でデータを送受信する「Wi-Fi」や「Bluetooth」とは異なる特徴や利点、そして課題がある。従来の無線規格にはないLi-Fi特有の利点や課題を解説する。

Wi-FiにはないLi-Fiだけの利点とは?

 Li-Fiの注目すべき強みは、使用するスペクトル(光を波長ごとに分けたもの)がWi-FiやBluetoothなど他の無線技術と重ならないことだ。Li-Fiの信号は、Wi-Fiを利用するデバイスと干渉しない。これにより通信の速度や安定性を発揮しやすくなり、他の無線システムと組み合わせやすくなる。業界標準化団体であるIEEE(米国電気電子学会)が、2023年に「IEEE 802.11bb」として承認したLi-Fi規格は最大速度9.6Gbpsとなっている。

 セキュリティもLi-Fiの利点だ。光は壁に遮られるため、他者による信号の傍受が難しい。だが、この利点は課題と背中合わせだ。Li-Fiの光は伝達距離が短く、室内でしか利用できないからだ。

 Li-Fiが機能するために必要な光の量は、照明の明るさや光源の種類によって変わるため、最適な環境設定が求められる。可視光が必要な製品もあれば、暗がりでも機能する製品もある。

Li-Fi開発の道のり

 IEEEは2018年にワーキンググループの「802.11bb Light Communication Task Group」を設置して、Li-Fi規格の策定に乗り出した。2023年にIEEE 802.11bbをLi-Fiの最初の正式な仕様として承認した。

 Wi-Fi規格が策定された当初は、規格から逸脱した製品が数多く出回っていた。メーカーが今後、Li-Fi規格に準拠し、異なるメーカーの製品間の相互運用性を確保するかどうかは未知数だ。Li-Fi製品メーカーらが、業界団体Wi-Fi Allianceを模したLiFi Group (LiFi.coの名前でも活動)を結成している。LiFi Groupの業界団体としての取り組みが成果に結び付くかどうかを判断するには、もうしばらくの時間が必要だ。

 現状、Li-Fi製品は存在するが、安価とは言えず、用途も限られている。Li-Fiがニッチ市場のままなら、製品価格の高止まりや、機能の相互運用性が乏しくなる可能性もある。これはLi-Fi技術に対する批判ではない。どのような技術にも出発点がある。メーカーはLi-Fiの開発を前に進めるしかない。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news151.jpg

広告への苦情、2024年上半期は「4095件」 具体的な内容は……?
日本広告審査機構(JARO)は、広告に関する統計データを年2回公表している。今回は、2024...

news063.jpg

Metaの「イーロン・マスク化」が広告ビジネスに及ぼす影響
Metaがモデレーションルールを緩和し、ファクトチェックを廃止することを決定した。これ...

news182.jpg

世界の広告総収入は1兆ドル超えへ デジタル広告が成長をけん引
2024年の世界広告収入が初めて1兆ドルを突破する見通し。デジタル広告の拡大が成長を支え...