光を利用する無線技術「Li-Fi」が2023年に標準化され、普及の道筋が見えてきた。他の無線通信規格と比較して、Li-Fiにはどのような利点と課題があるのか。
光を利用する無線技術「Li-Fi」(Light Fidelity)が2023年に標準化された。Li-Fiには電波でデータを送受信する「Wi-Fi」や「Bluetooth」とは異なる特徴や利点、そして課題がある。従来の無線規格にはないLi-Fi特有の利点や課題を解説する。
Li-Fiの注目すべき強みは、使用するスペクトル(光を波長ごとに分けたもの)がWi-FiやBluetoothなど他の無線技術と重ならないことだ。Li-Fiの信号は、Wi-Fiを利用するデバイスと干渉しない。これにより通信の速度や安定性を発揮しやすくなり、他の無線システムと組み合わせやすくなる。業界標準化団体であるIEEE(米国電気電子学会)が、2023年に「IEEE 802.11bb」として承認したLi-Fi規格は最大速度9.6Gbpsとなっている。
セキュリティもLi-Fiの利点だ。光は壁に遮られるため、他者による信号の傍受が難しい。だが、この利点は課題と背中合わせだ。Li-Fiの光は伝達距離が短く、室内でしか利用できないからだ。
Li-Fiが機能するために必要な光の量は、照明の明るさや光源の種類によって変わるため、最適な環境設定が求められる。可視光が必要な製品もあれば、暗がりでも機能する製品もある。
IEEEは2018年にワーキンググループの「802.11bb Light Communication Task Group」を設置して、Li-Fi規格の策定に乗り出した。2023年にIEEE 802.11bbをLi-Fiの最初の正式な仕様として承認した。
Wi-Fi規格が策定された当初は、規格から逸脱した製品が数多く出回っていた。メーカーが今後、Li-Fi規格に準拠し、異なるメーカーの製品間の相互運用性を確保するかどうかは未知数だ。Li-Fi製品メーカーらが、業界団体Wi-Fi Allianceを模したLiFi Group (LiFi.coの名前でも活動)を結成している。LiFi Groupの業界団体としての取り組みが成果に結び付くかどうかを判断するには、もうしばらくの時間が必要だ。
現状、Li-Fi製品は存在するが、安価とは言えず、用途も限られている。Li-Fiがニッチ市場のままなら、製品価格の高止まりや、機能の相互運用性が乏しくなる可能性もある。これはLi-Fi技術に対する批判ではない。どのような技術にも出発点がある。メーカーはLi-Fiの開発を前に進めるしかない。
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