精度の高い実績データがなく、勘と経験に基づいてソフトウェア開発プロジェクトの見積もりを策定する企業は多い。しかし、過去の経験だけでは対応できない案件も増え、精度の低い見積もりとなることもある。
ソフトウェア開発プロジェクトが失敗に終わるパターンは幾つか考えられる。「納期に間に合わない」「成果物の品質が低い」「予算をオーバーする」などだ。中でも、当初の予算を上回るコストが発生してしまう赤字プロジェクトは典型的な失敗例といえるだろう。そして、その原因となっているのが「プロジェクト受注段階における過小な見積もり策定」であることが多い。
現在、ソフトウェア開発プロジェクトを受注するに当たり、多くの企業ではこれまで蓄積してきた経験を基にした精度の高いデータがなく、プロジェクトマネジャー(以下、PM)の勘や経験に頼って、顧客の要件仕様に合わせて見積もりを策定している。しかし、自社の持つ経験値からのデータだけでは、精度の高い見積もりを策定することは難しい。また「プロジェクトが進んでいくうちに要求仕様が膨れ上がり、終わってみれば当初見積もりを大幅に上回るコストが発生していた」というケースも少なくない。
また、データ化されていない個人的な経験を基にした手作業での見積もり策定は、PMのスキルによって、その精度が大きく左右されてしまうという問題もある。「豊富なプロジェクト管理経験を持つベテランのPMであれば、精度の高い見積もりを策定してくれるはず」という考えもあるが、Webアプリケーション開発などのように、過去の経験だけでは対応しきれない開発案件も増えているのが現状だ。
構造計画研究所 ソフト工学センター 定量化ソリューション マーケティング&セールス マネージャの加治屋卓見氏は「開発プロジェクトの運用効率化のために、プロジェクト管理ツールを導入する企業が増えてきているが、一般的なプロジェクト管理ツールでは見積もりの精度向上にはつながらない」と指摘する。これに対して、同社が提供するソフトウェア見積もり支援ツール「KnowledgePLAN」は、PMの経験レベルに左右されずに、信頼性の高い見積もりが策定できると説明する。今回は、KnowledgePLANの特徴的な機能を紹介する。
KnowledgePLANは、米国のSPRが1997年からワールドワイドに展開しているソフトウェア開発プロジェクトの見積もり・計画策定ツールである。KnowledgePLANでは、1万件を超えるプロジェクト実績データを搭載した知識データベースを基に、プロジェクトの所要工数や期間、品質、コスト、成果物の規模などを予測できる。構造計画研究所は2008年に同製品の国内総代理店となり、日本市場での販売に力を注いでいる。2010年2月には最新バージョンとなる「4.3」をリリースしたばかりだ。
加治屋氏は、KnowledgePLANでは「分類」「サイジング」「属性」「オーバーライド」という4つの要素を知識ベースに組み合わせることで、より高精度の見積もり策定を実現すると説明する。同社が発行する書籍『ソフトウェア見積りのすべて』によれば、手作業で見積もりをした場合、75%以上のプロジェクトで35%以上の誤差が発生し、その誤差は最大50%を超えるケースもあるという。一方、ツールを使って見積もりをした場合は、45%のプロジェクトが約5%以内の誤差に収まり、最大誤差も30%程度にとどめることができると説明する。
KnowledgePLANは、どのようにしてプロジェクトの見積もりを算出しているのだろうか。実際に、KnowledgePLANの利用手順を追っていくと分かりやすい。
まず、必須項目として設定する要素がプロジェクトの分類とサイジング。分類ではプロジェクトの分類を明確にするための要素として、プロジェクトの特性、スコープ、トポロジー、クラス、タイプの5つの分類項目をそれぞれ選択する。サイジングは、プロジェクトの開発規模を判断する要素。見積もり策定を行うタイミングに応じた規模把握ができるように、アナロジー(類似性)、コンポーネント、メトリックという3種類の規模設定を用意している。この中で、最も精度が高いのがメトリックで、その規模尺度として「ファンクションポイント」(以下、FP)値を指定できる点が、KnowledgePLANの特徴だ。
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