ソーシャルコラボレーションソフトウェアは、もし適切に取り入れれば、時間と予算の節約になり、生産性の向上につながる。「可能性は無限にある」と関係者は話す。
エンタープライズ向けソーシャルネットワーキングツールを既存のシステムやアプリケーションに統合できれば、企業はもっと容易にこうしたツールの可能性を解き放つことができるかもしれない。
IT部門はエンタープライズソーシャルネットワーキングツールをほとんど付加価値のないコミュニケーションツールの一種と見なし、採用を渋ることもある。だが、ソーシャルコラボレーションソフトウェアは、もし適切に取り入れられれば、時間と予算の節約につながり、生産性も向上する(参考記事:ソーシャルネットワーキングをビジネスに活用するCIOたち)。ただし多くの場合、この「もし」が大きな問題になる。
医療関連企業米Humanaのコミュニティーマネジャー ジェフ・ロス氏は「(自社のプラットフォームに)より多くの業務プロセスを組み込むために、やるべきことはまだたくさんある」と話す。
コンサルティング企業、米McKinsey&Companyの報告書によると、エンタープライズソーシャルネットワーキングツールは電子メール管理、社内コミュニケーション、情報検索に費やす生産性時間を節約し、年間何十億ドルもの経費節減を可能にする。従業員が電子メール処理のために費やす時間は、1週間の勤務時間のうち約3分の1を占める。4200社について分析した結果、ソーシャルコラボレーションツールでこの時間を削減できることが判明した。
全米50州に4万人の従業員を擁するHumanaは、2年ほど前から米VMwareの「Socialcast」を使ってきた。この間にSocialcastの登録ユーザーは2万人に増え、どの月を取ってもユーザーの約半数が積極活用している。
Socialcastの守備範囲をさらに広げるためには、既存のシステムやアプリケーションとの統合を強化する必要があるとロス氏は言う。「Microsoft(マイクロソフト) SharePoint」との統合では、Socialcastのユーザーが作成した体系化されていないデータを、検索可能な文書としてアーカイブし、保存している。またロス氏は、Humanaが使っている電子メールクライアントの「Microsoft Outlook」とSocialcastを統合し、同プラットフォームをモバイル端末でネイティブ利用することも試みた。しかし、セキュリティ不安や既存のモバイルポリシーの存在、優先すべき他のプロジェクトがあることを理由に、IT部門の抵抗に遭っている。
「われわれは目標に到達しつつある。スタート地点からは大幅に前進した。事を進めるためIT部門に働き掛けているが、IT部門は他にやるべきことがたくさんあるのは理解できる」とロス氏。
エンタープライズソーシャルネットワーキングのプラットフォームには、Socialcastの他にも、米Salesforce.comの「Chatter」「Jive」、米Citrixの「Podio」、米Cisco Systemsの「WebEx Social」、米Microsoftが最近買収した「Yammer」などがある。だが、それを使っている組織の大半は、既存のコミュニケーションツールの上にこうしたツールを移植しているにすぎないと話すのは、米調査会社Current Analysisのコラボレーションアナリスト ブラッド・シミン氏。
こうしたプラットフォームが進化して、「既存のシステムとアプリケーションが人間と交流する」ための手段になれば、多様なシステムを横断するワークフローの自動化によって、多大な価値が見いだせるだろうと同氏は言う。
それが実現すれば、経営レベルからの圧力がかかり、IT部門もこうしたツールをサポートせざるを得なくなるだろうとも言い添えた。
いずれは会社の他のさまざまな資産間の関係促進と管理のために、エンタープライズソーシャルネットワーキングツールを使うことも可能になるかもしれない。先日開かれた「VMworld 2012」カンファレンスでは、Socialcastの簡単なデモが行われ、仮想マシンなどのシステム同士が、まるで人間の参加者のように交信する様子が披露された。
VMwareのSocialcast担当プロダクトマネジャー、アレクシ・ロビショー氏は言う。「われわれはその構想に向けた作業に着手している。単に共有したり、『いいね』を投稿したりするだけでなく、(ユーザーが)ソーシャルネットワークのフィードからワークフロープロセスを起動できるようになる。そういう構想だ」
例えば営業担当者がSocialcastでCRM(顧客管理システム)をフォローして、取引の成立など、行動につながる出来事が発生すると、更新情報を受け取れるようにする。同様の可能性を電子メール、予定表、ニュースアラートなどにも当てはめ、システムの更新などの関連プロセスを、IT部門からではなくシステムから届いたように見せることもできるとシミン氏は話す。「可能性は無限にある」(同氏)
Socialcastは直近のアップデートでOAuth 2をサポートし、エンタープライズシステムとアプリケーションが、実在する人間のユーザーに代わり、Socialcastのストリームに情報を登録・公開(パブリッシュ)できるようになった。例えば、システムアップデートのために組織のネットワークをダウンさせる場合でも、IT部門が従業員に電子メールを送信してネットワークに接続しないよう通知する必要がなくなる。
Socialcastにステータスアップデートをパブリッシュすることにより、「システムが従業員に通知してくれる」とロビショー氏。
同氏によれば、そうしたマシン対人間の交流が実現するのはまだ1年ほど先になりそうだ。Socialcastを他のエンタープライズシステムやアプリケーションに統合するのは比較的容易だが、逆は難しいことが分かっているとも付け加えた。
「IBM Connections」は、ソフトウェアをサービスコンポーネントのセットに分割してそれぞれから独立して使えるようにすることで、一部のシステムと人間との交流を実現している。米TIBCO Softwareの「Tibbr」も同様の機能を持つ。シミン氏によると、エンタープライズソーシャルネットワーキングでこの方向を目指しているのは、VMwareで3社目にすぎないという。
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