企業がギガビット無線LAN「IEEE 802.11ac」に移行すべき4つの理由「第5世代Wi-Fi」製品がもたらす価値

標準化が進められている「IEEE 802.11ac」規格は、煩わしいイーサネット接続が不要な無線LANの通信速度を大幅に向上させる見通しだ。企業規模にかかわらず、802.11acに移行したいと思わせる4つの理由を紹介する。

2013年01月07日 08時00分 公開
[Vince Fon,TechTarget]

 モバイル端末の利用が進んでいる今日のビジネス環境では、高速な無線ネットワーキングが不可欠になっている。そのため企業は、有線接続なしで暗号化データをより高速に伝送できる技術を常に探している。現在、標準化が進められている「IEEE 802.11ac」規格(以下、802.11ac)は、煩わしいイーサネット接続が不要な無線LANの通信速度を大幅に向上させる見通しだ(関連記事:【技術動向】モバイルもギガビットの時代へ、「無線LAN」の高速化技術)。

 では、802.11acではどのくらいの速度が得られるのか。802.11acユーザーは理論上、1Gbps以上のデータ伝送が可能になるとされている。無線LANの最新標準規格である「IEEE 802.11n」(以下、802.11n)に準拠する製品では、現在最も高速なデータ伝送速度は450Mbpsであり、これをはるかに上回る速度が得られることになる。

 802.11nは、空間ストリーム当たり最大150Mbpsの帯域幅でデータを伝送できる仕組みになっている。これに対し、802.11acでは、空間ストリーム当たり433Mbpsと現行の3倍近くの速度になる。現在、802.11n準拠製品の空間ストリーム数は最大3つにとどまるが、802.11acでは、この数は最大8つに増える。従って、802.11acで空間ストリーム数が最大の場合の速度は「433 ×8 = 3464(Mbps)」、つまりほぼ3.5Gbpsとなる。

 ちなみに、4G LTEスマートフォン向けデータプランの多くは、ユーザーに1カ月当たり5Gバイトを提供している。802.11acでは理論上、これだけのデータを12秒未満で伝送できることになる。もちろん、これはあくまで理論値に基づく計算であることに注意することが重要だ(関連記事:iPhone 5のWi-Fiとどう違う? ギガビット無線LAN「802.11ac」のすごさ)。

 現在の第1世代の802.11ac機器(ドラフト段階の802.11ac規格に基づいている)では、規格上の最高速度は1.3Gbps、実効速度は800Mbps程度となっている。また、通信距離や干渉、同時接続といった外部要因の影響で、ユーザーはそうした魅力的な理論速度を決して享受できない。それでも、この実効速度は既存規格の速度を大幅に上回っている。

 初期の802.11acハードウェア機器では、空間ストリーム数が3つにとどまることにも留意が必要だ。しかし、2013年に802.11ac規格の標準化と対応機器の製品化が進むとともに、その数は増えることが予想される。

 次の重要な問題は、802.11acが実現するこうした速度を本当に必要とする人がいるか、そして802.11acの登場が、まだ802.11nに慣れている段階の企業にとって何を意味するかだ。以下の4つの理由から規模の大小にかかわらず、どの企業も802.11acに移行したいと考えるだろう。まだ802.11nを導入しているところだとしてもだ。

1. 社員に選択肢を提供する

 通話やテキストメッセージの送信だけでなく、豊富な機能を利用できるモバイル端末が増加し、企業の負担は大きくなっている。しかし、ほとんどの企業では、社員が快適に働き続けることが最優先課題だ。そのため、社員が個人所有のモバイル端末から企業システムにアクセスすることをほんの数年前には認めなかった企業が、そうしたアクセスを許可する動きが急速に広がっている。それが理にかなうからだ。

 ほとんどの経営幹部は、そうしたアクセスを許可することが生産性の向上を促進すると考えている。例えば、ある社員がランチを食べているときに、自分のノートPCから社内データベースにアクセスできれば、その社員は迅速に仕事を処理できるだろう。

 BYOD(私物端末の業務利用)ブームに加え、IT部門が自社データのセキュリティ対策を精力的に進めている。このことが、シンプルなアプリや安全なモバイルポータル経由で企業システムに接続できるiPhoneiPadをはじめ各種のスマートフォンやタブレットなどの個人所有端末への旺盛な需要を喚起している。

 802.11acは、こうした端末利用に伴うトラフィックの増加に対応するのに必要な帯域幅を提供する。

2. 技術の進歩を活用する

 20年前は、ビデオ会議を行うというと「実用的ではない」、あるいは「法外なコストが掛かる」とは思われないまでも、SFじみて聞こえたかもしれない。10年くらい前でも、ビデオ会議を行おうとすると、動画の途切れが頻発し「利用は時期尚早」と判断されたかもしれない。

 しかし現在は、SkypeAppleのFaceTimeのようなアプリケーションに加え、ハイエンドの高精細Web会議サービスが利用できるようになり、電話会議はこれらに比べて使い勝手が悪いと感じられるようになってきている。ただし、こうした便利なアプリケーションやサービスには、大量の帯域を消費するという難点がある。帯域が足りなくなると、動作がひどく重くなってしまう(関連記事:「タブレットでWeb会議」に見るモバイルユニファイドコミュニケーションの成長性)。

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