「Surface競合タブレット」をNokiaが発表、買収するMicrosoftの胸中は機能も価格もSurfaceと酷似

「Surface 2/Pro 2」の投入で市場シェア拡大を目指すMicrosoft。一方、同社が買収するNokiaの携帯端末部門も、Surfaceの競合とも取れるタブレットを発表。両者の思惑とは?

2013年11月18日 08時00分 公開
[Diana Hwang,TechTarget]

 2013年10月、米MicrosoftとフィンランドのNokia、米Appleが、私物端末を仕事でもプライベートでも使う購入者をターゲットにした新製品をそろって販売開始し、タブレット戦争がヒートアップしている。

 Microsoftは、米国内の10都市で深夜のローンチイベントを開催。新しい「Surface 2」と「Surface Pro 2」をお披露目した。ボストンで開催されたこのローンチイベントに参加したビジネスユーザーは、新しいSurfaceBYOD(私物端末の業務利用)用に購入すべきかどうか吟味していた。

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 米ソフトウェア開発会社でビジネスアナリストを務めるカルロス・デ・ロス・サントス氏は、仕事でもプライベートでも使う端末として、256GバイトのSurface Pro 2の購入を考えていると話す。出張が多い同氏は、ドッキングステーションやバックライト付きキーボード、バッテリー駆動時間の向上、マルチタスク機能など、第2世代のSurfaceの機能を気に入っている。

 同氏の会社では、マーケティングや財務など一部の部門がモバイル端末の利用を推進しており、AppleのiPadを試している。だがその他の部門は、Windowsアプリケーションしか使用していないため、それらの部門の従業員のニーズにはSurfaceが合うだろう、ということだ。

 ボストンのローンチイベントでは、プロアイスホッケーチームBoston Bruinsの代表、キャム・ニーリー氏も、Surfaceに注目していた。

 「私はクライアントPC派だ」とニーリー氏は言いつつ、Surfaceの「いいサイズの画面」は気に入っているようだ。Surfaceは、スタッフの移動を考えると、軽量のモバイル端末として便利かもしれない。

 Microsoftは、Surface 2とSurface Pro 2の予約販売は好調だと説明する。2013年2月に発売された初代のSurface ProでもMicrosoftは同じような発表をしていたものの、実際にはパッとしない売れ行きで、誤解を招く発表となった。

 ボストンのMicrosoft直営店のストアマネジャー、タイ・ハプワース氏は、予約販売は「大好評」だが、まだ若干在庫があると語る。

Surface 2とNokiaタブレットに影を落とすWindows 8.1 RTの問題

 2013年10月中旬に発生したWindows RT 8.1アップデートの問題(Windows RTからWindows RT 8.1へのアップデートが完了せず起動不可になるという問題)は、Windows RT 8.1アップデートのWindowsストアでの提供中断にまで発展し、MicrosoftのSurface 2のローンチに水を差す格好になった。Microsoftによると、この問題はWindows RTタブレット1000台につき1台の割合で発生し、あるブート構成ファイルが正常な起動を妨げていたことが原因だという。

 「Windows (RT) 8.1のリリースの提供中断は、Windows 8やそのマイナーアップデートの展開を急いでいた少数の企業ユーザーの背筋を凍らせたことだろう」と話すのは、ITコンサルティング会社の米High Rock Strategyの主席アナリスト、クリス・シルバ氏だ。「この問題のために、Windows 7からのアップデートを検討している企業ユーザーは、決断を保留するだろう。8.1の提供中断と、影響を受けたユーザーの問題を解決するための対応は、新しいWindowsとSurfaceの投入に当たって最悪のタイミングで行われた」とシルバ氏はコメントしている。

 一方、Microsoftによって間もなく携帯端末事業が買収される予定のNokiaは、(Surfaceと)競合する10インチの Windows RT 8.1タブレット「Lumia 2520」、Windows Phoneファブレット「Lumia 1520」の他、低価格の携帯電話端末「Nokia Asha」を発売した。

 定価499ドルのLumia 2520は、Nokiaが初めてタブレット市場に投入した製品になる。アナリストは、Microsoft自身のSurface 2と比較して、Lumia 2520はLTEに対応していることを評価している。とはいえ、Lumia 2520はWindows RT 8.1端末であることに変わりはなく、売れ行きは気になるところだ。

 「Nokiaはもっと競争力のあるタブレットを提供する必要があった。それを実現する上で最も楽なアプローチがWindows RT 8.1だった」と、米J. Gold Associatesの主席アナリスト、ジャック・ゴールド氏は説明する。「またNokiaの場合、採算を取るには、必ずしも米Hewlett-Packardや中国Lenovo、台湾ASUSTeK Computerのように大量に端末を販売する必要はない」

 Nokiaのタブレット事業が、MicrosoftにNokiaの携帯端末部門が買収された後も存続するかどうかは、まだ分からない。Lumia 2520は、Surface 2よりも約50ドル高いが、Microsoft製のWindows RT 8.1タブレットと競合しているのは明らかだ。

 「Nokiaの端末とSurfaceは機能も価格も似すぎていて、Microsoftがどちらかの価格を大幅に下げない限り、両方が市場に残ることはできないだろう。Microsoftは、Surfaceシリーズを引き続き優先する可能性が高く、Nokiaのタブレットの先行きは長くないだろう」とゴールド氏は見ている。

 Microsoftが市場のシェア拡大を狙う中で、MicrosoftとNokiaはそれぞれに、両者の製品の類似性をどう維持するかを決めなければならない。

 「複数のブランドがあの手この手でタブレットを販売している状況では、特定の機能をエサにして顧客を集めることは難しい」とシルバ氏は言う。

 Nokiaは、6インチのHDスクリーンのファブレット「Lumia 1250」も発表している。Lumia 1250は、20Mピクセルのカメラ技術「PureView」を実装し、端末のリモートロックやリモートワイプ、セキュアNFC、アプリケーションサンドボックスなど、エンタープライズ向けのセキュリティ機能も多数搭載している。Lumia 1250は、今四半期に、AT&Tから750ドルで発売が開始される予定だ。

 また、Appleも新型iPadと、Retinaディスプレーモデルとなる新しいiPad miniを発表している。2013年9月のiPhone 5sとiPhone 5cの後を追うように、これらの製品も同年11月に発売が開始された。

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