デスクトップ仮想化導入事例
富士市役所が運用性を極めた3世代目システムを稼働、そのシステム構成を大解剖
静岡県富士市役所は、2014年1月に3世代目のデスクトップ仮想化システムを稼働させた。サーバ仮想化でコストを下げ、シンクライアント専用OSで運用性を極めた。
静岡県富士市役所は2001年、シトリックス・システムズ・ジャパンのターミナルサーバ「Citrix MetaFrame」(現「Citrix XenApp」)を導入。クライアントのデスクトップとアプリケーションをサーバ上で実行し、画面情報のみ端末に転送するデスクトップ仮想化環境を作り上げた。富士市役所 総務部情報政策課の深澤安伸氏は「少ない職員(現在4人)で大量のPCを運用管理する上で、サーバ環境の運用管理を伴うとしても合理的と判断した」と話す。
2007年には、リース満了によるシステム更改でMetaFrameから後継製品の「Citrix Presentation Server」(CPS)に移行し、2世代目システムを構築した。この時に、CPSサーバ群の構成をシンプルかつ一定に保ち、運用を容易にするため、「Citrix Provisioning Services」(PVS)によってデスクトップ/アプリケーションの起動イメージを一元管理し、ネットワークブートする仕組みも取り入れた。
クライアント端末は当初、「Windows CE」ベースの専用機1200台を配布。2世代目になると、「画面転送の性能を高めるには、端末ローカルのリソースも必要」(深澤氏)という理由から「Windows XP Embedded」ベースに切り替え、配布台数も段階的に2400台に増やした(現業職なども含めた総人員は4000人)。
そして富士市役所は2014年1月、3世代目のデスクトップ仮想化システムを全面稼働させた。新システム(サーバ、クライアント環境)の構築・運用に要する総コスト(5年間のリース費用)は9億円強になり、端末1台当たりの月額で見ると7750円。1、2世代目と比べると20%強もコストが下がる。そのシステム構成のポイントを紹介しよう。
サーバ環境の仮想化で物理サーバは3分の1へ
サーバ環境には、CPSの後継製品「Citrix XenApp 6.5 FP2」を迷うことなく採用した。「Citrix製品への満足度は高く、継続性を重視した」(深澤氏)わけだ。ただ、64ビットとなる新システムの中でも、32ビットの「Microsoft Office 2003/2007」を継続して使用するため、CPSサーバ(サーバOS「Windows Server 2003 R2」)を一部残してXenAppサーバ(同「Windows Server 2008 R2」)と併存する形とした。
サーバ構成は、サーバOSのデスクトップを配信するXenAppサーバが76台、業務に特化したアプリケーションを配信するXenAppサーバが8台、Office 2003/2007を含む32ビットアプリケーションを配信するCPSサーバが各4台である(図1)。Office 2003/2007/2013と3つのバージョンを併用できるのもデスクトップ仮想化ならではだろう。
新システムでの大きな挑戦は、機が熟したサーバ仮想化を取り入れたことだ。ハイパーバイザー「XenServer 6.2」上でXenApp/CPSサーバや管理サーバを稼働させることによって、従来環境で108台だった物理サーバの数は48台(ブレード型)に集約された。これがコストパフォーマンス向上に大きく貢献している。
一方、ただでさえ性能管理が難しいデスクトップ仮想化にサーバ仮想化を組み合わせたことで、「性能設計にはより気を遣った」(深澤氏)という。物理サーバ1台当たりの仮想サーバ(XenApp/CPSサーバ)の台数を3台に抑えた。また、ネットワークブートで使うPVS 7.0のキャッシュデータを配置するため、物理サーバの直付ストレージにはI/Oが高速なSSD(Solid State Drive)を採用した。
また、ユーザーデータを格納する共有ストレージにはNEC「iStorage M700」(ディスク容量50Tバイト)を採用し、アクセス頻度に応じてドライブ種を使い分ける階層型ストレージを実践、快適なデータアクセスを提供する。高速プールと2次キャッシュにはSSD、一般プールがSAS(回転数1万5000rpm)、バックアップ用の低速プールにはニアラインSAS(7200rpm)という階層を持ち、データのプール別配置は自動的に最適化される。
シンクライアント専用OSで集中管理を徹底
新システムになって大きく変わったのはシンクライアント端末である。Windowsベースから専用OSベースに切り替えたのだ。深澤氏は「USBデバイスの接続など通常のPCと同じ機能が求められると想定してWindows Embeddedを使ってきたが、現実にはニーズが少なかった。それなら軽量な専用OSの方がよいと考えた」と話す。なお、シンクライアントでカバーできない処理を行うファットクライアントは別途、各部署に配布されている。
複数あるシンクライアント専用OSの中から選んだのが、ワイズテクノロジーの画面情報転送型に特化した「Wyse ThinOS」(WTOS)だ。その理由は「集中管理のしやすさ」(深澤氏)である。“ゼロコンフィグレーション”をうたうWTOSでは、端末が自動でネットワーク上の管理サーバから設定ファイル(全体・個別)を読み込み、初期設定を行う仕組みを持つ。つまり、ローカルでの設定は一切不要になる。深澤氏は「(設定ファイルへの)スクリプト記述なので設定の自由度が高い」と力説する。
富士市役所の場合、起動したWTOS端末は自動的にDHCPサーバからネットワーク設定を取得した後、管理サーバに接続し、ファームウェア、ルート証明書、クライアント証明書、クライアント設定(全体・個別)をダウンロードし、ホスト名や無線LANを設定、ファームウェアを更新していく。マウスの左利き設定など個別設定も行う。電源を入れてから設定完了までに要する時間はわずか3分。効率良く端末を大量展開できる。
WTOS端末には、ARM系CPU(1GHz)を搭載するノート型「Wyse X10j」を1950台調達する(別に従来機450台を継続利用)。それは「機動性以上に災害対策からの選択」(深澤氏)という。災害により本庁内が停電した場合、自家発電でサーバ群やネットワーク機器を動かし続ける一方、PoE(Power over Ethernet)給電対応の無線LAN機器とバッテリー駆動の端末によって、職員も一定時間は端末上で業務を継続できる仕組みだ。
また、全職員が複合機や入退室で利用する配布済みのICカードを使ったユーザー認証法も新たに取り入れた。認証システムには、ジャパンシステムが提供する「ARCACLAVIS Ways for Thin Client」を採用した。「ユーザーがICカードを紛失したり、破損させたりした場合でも運用が煩雑にならない仕組みを実装できる点を高く評価した」(深澤氏)という。
富士市役所が導入した3世代目のデスクトップ仮想化システムは、運用管理をできるだけシンプルにするための工夫が随所に盛り込まれている。向こう5、6年は古びそうにない先進的なシステムだ。今後は、隣接する富士宮市と計画するデータセンターおよびコンピュータの共同利用に合わせて、2014年末までに新システムのサーバ環境をオンプレミスから外部のデータセンターに移管し、可用性を高める方針だ。
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