IT製品やサービスの選定に関わる読者はIT活用に関してどのような課題を抱えていて、どのような次のIT投資を考えているのか。読者調査から2016年の動向を見る。
TechTargetジャパンは2015年11、12月に、TechTargetジャパン会員を対象に「TechTargetジャパンご利用に関するアンケート調査」を実施した。回答したのは433人の会員で、「情報システム部門で主に導入・検討や運用に関わる立場」の方が約3割を占めた。「一般部門でユーザーとして利用、かつ導入・検討も行う立場」の方も2割強いた。本稿では、アンケート調査から見えてきた読者が所属する企業が抱える課題や、その課題を解決するための次のIT投資を探る。
目的:TechTargetジャパンのコンテンツやサービスの利用状況、今後のIT投資動向調査するため。
方法:Webによるアンケート
調査対象:TechTargetジャパン会員
調査期間:2015年11月27日〜12月31日
総回答数:433件
※回答の比率(%)は小数点第2位を四捨五入し表示しているため、比率の合計が100.0%にならない場合があります。
IT部門における最重要課題を聞いた質問では、「セキュリティの強化」が65.6%でトップだった。国内外の企業や組織で相次ぎ発生する情報漏えい事件や不正アクセス事件を受けて、企業が神経質になっていることが分かる。どこまで対策をすればいいのかというゴールが見られない分野でもあり、現在では侵入されることを前提に、情報の拡散を防ぐなど「事後の対応」に注目する企業も多くなってきた。
2位は「コスト削減」(58.9%)。ITを使った業務のコスト削減だけではなく、近年問われているのがIT自体のコスト削減だ。そのための手法として目立つのが調査でも5位に入った「クラウドコンピューティングの活用」。2015年は、開発環境や情報系システムを超えて基幹系システムのクラウド移行が多く見られた。2016年はその動きがさらに加速すると同時に、クラウドを前提にシステムを構築する「クラウドネイティブ」がより広がるとみられる。
項目 | |
---|---|
セキュリティの強化 | 65.6% |
コスト削減 | 58.9% |
サーバ・ネットワークなどインフラの見直し | 44.8% |
スマートデバイスの業務への活用 | 40.9% |
クラウドコンピューティングの活用 | 39.3% |
迅速な業績把握、情報把握 | 33.9% |
クライアント(PC)環境の変更・見直し | 32.1% |
社員間の情報・ナレッジ共有 | 31.4% |
IT人材の不足・老齢化 | 29.1% |
営業支援・顧客管理を強化する仕組みの構築 | 28.6% |
上位10項目。回答は上位3つを選択、集計は合計数 |
関連して3位には「サーバ・ネットワークなどインフラの見直し」が44.8%で入った。クラウドの利用は進んでいるが、ある程度の規模の企業ではオンプレミス環境と組み合わせて使う「ハイブリッドクラウド」への注目が高まっている。この回答からは、今後ハイブリッドクラウド環境を前提にインフラを強化していきたいという動きが読み取れる。「ハイパーコンバージド(超垂直統合型)インフラ」などハードウェアの新しい展開も増えてきた。2016年は企業のインフラ環境が大きく見直される可能性もある。
「今後1年以内に勤務先で新たに導入予定のIT関連製品・サービス」では、「PC・モバイル関連製品」が49.4%でトップだった。業務の効率化や生産性の向上を目的に企業でモバイルデバイスの導入が進んでいると同時に、日本マイクロソフトのOS「Windows 7/8.1」環境から最新OS「Windows 10」搭載PCへの移行が進んでいることが背景にある。Windows 10は2016年7月までは無償でアップグレードできるとされている(一部エディションを除く)。2016年は企業のクライアント環境が大きく変わりそうだ。
項目 | |
---|---|
PC・モバイル関連製品 | 49.4% |
サーバ・ストレージ関連製品・サービス | 29.3% |
OA・周辺機器(UPS、プリンタ、複合機など) | 18.9% |
セキュリティ関連製品・サービス | 16.9% |
ネットワーク機器 | 15.7% |
情報系システム・サービス(CRM、グループウェア、BI、Web会議など) | 14.8% |
OS関連 | 10.2% |
ネットワーク・通信サービス(回線、IDCなど) | 8.8% |
開発系ツール | 8.8% |
基幹系システム・サービス(ERP、SCMなどの基幹系システム) | 7.6% |
上位10項目、複数回答 |
2位に入ったのは29.3%で「サーバ・ストレージ関連製品・サービス」だった。映像をはじめとする非構造化データや、IoT(モノのインターネット)で活用されるセンサーデータなど企業が扱うデータは増え続けている。加えて、企業によってはそのデータを分析し、ビジネスに生かすことを考えるケースも多くなってきた。その際に必要になるのが高速処理やデータ分析に適したストレージ。オールフラッシュアレイの普及や、「コールドストレージ」と呼ばれるデータアーカイブの新潮流、オブジェクトストレージの利用拡大など、新技術が相次ぎ登場している分野だけに企業の注目度も高いようだ。
ユーザー企業自身が企画、導入することができるクラウドサービスやセルフサービスBI、セルフサービスアプリ開発ツールが相次ぎ登場するなど、日本のIT市場を取り巻く状況は近年、大きく変化している。ユーザー企業とベンダー、システムインテグレーターとの関係が変わることで、ITシステムやサービスの導入は今後どうなるのか。TechTargetジャパンは2016年もユーザー企業の製品選択の羅針盤となるべく、情報を提供していきたいと思う。
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