SaaSなどのクラウドサービスは生産性向上につながる一方で、ネットワークの逼迫(ひっぱく)といった問題も招きます。本稿はネットワークの問題を生じさせるクラウドサービスの特性を考察します。
デジタイゼーション(デジタル技術で業務プロセスを変革し、生産性向上などの成果につなげること)や働き方改革の推進に伴い、オフィススイートの「Office 365」や「G Suite」、ファイル同期の「Box」、顧客管理システム(CRM)の「Salesforce」といったSaaS(Software as a Service)を利用する企業の動きが広がっています。SaaSの普及によって、生産性向上や社内のコミュニケーション活性化につながる業務アプリケーションを迅速に導入できるようになりました。一方で社内システム向けのトラフィックが全てインターネットに流れる点は従来型の業務アプリケーションとは異なり、注意が必要です。
企業ネットワークの構成は、各拠点からインターネットへ接続する通信をデータセンターに集約することが一般的です。この構成ではSaaSのトラフィックを十分かつ安定的に扱うことができず、SaaSの快適な利用が阻害されることがあります。生産性を高めることが目的だったはずのSaaSの導入が裏目に出てしまうのです。
本連載は、まずはSaaSを中心としたクラウドサービスを活用する際に注意すべき企業ネットワークの問題を明らかにします。そしてその問題に対処するために必要なクラウドサービスのトラフィックを最適化する方法、さらに適切な製品/サービスの選び方を解説します。
クラウドサービスに共通した特徴として、高額な初期導入コストをかけずに迅速に導入可能である点や、効率的な運用管理ができる点があります。社内システムを自社のデータセンターから「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」(Azure)のようなIaaS(Infrastructure as a Service)に移行する動きが広がっており、これも同様の利点を企業が享受しようとしているためだと言えます。
業務アプリケーションをOffice 365、G Suite、BoxのようなSaaSに切り替える際にも同様の利点を期待できますが、IaaSとは異なる利点もあります。SaaSの代表的なメリットを下記にまとめました。
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