Microsoftは、在宅勤務などのテレワークに役立つ複数のリモートアクセス手段を提供している。まずは歴史のある「Remote Desktop Services」(RDS)の特徴と仕組みをおさらいしよう。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行の影響で、企業のIT担当者は、在宅勤務などのテレワークへの移行に向けた体制を整える必要が生じた。テレワーク中の従業員が業務アプリケーションを利用できるようにするために、IT担当者は自社にとって最適な技術を早急に判断しなければならなくなった。
従業員が社外から仕事に必要なアプリケーションやデータにアクセスするために役立つのが、リモートアクセス技術だ。Microsoftはリモートアクセスを実現する複数の手段を提供している。
Microsoftが提供する主要なリモートアクセス手段は「Remote Desktop Services」(RDS:リモートデスクトップサービス)と「Windows Virtual Desktop」(WVD)だ。それぞれが実現するエンドユーザーの体験は似ていても、使用している技術や稼働させるのに必要なインフラ、ライセンスモデルはそれぞれ異なる。前後編にわたり、RDSとWVDを比較する。まずはRDSの基礎をおさらいしよう。
「Terminal Services」(ターミナルサービス)を前身とするRDSは、Microsoftが提供するリモートアクセス手段の中でも、最も成熟した手段だ。画面転送プロトコル「Remote Desktop Protocol」(RDP)を使用することで、サーバOS「Windows Server」に対してリモートアクセスする「セッションベース」の仮想デスクトップを提供できる。
RDSは、Windows Serverにログインするエンドユーザーごとに、1つの仮想デスクトップを提供する。エンドユーザーはその仮想デスクトップで、Windows Serverにインストールされたアプリケーションを使用できる。
比較的簡単に導入できることが、RDSの大きな利点だ。適切なライセンスを取得すれば、RDSのセットアップ自体は半日もあれば完了でき、他のシステムやアプリケーションへの影響はほとんどない。ただし注意しなければならない点がある。RDSが実現する仮想デスクトップは、クライアントOSの「Windows」ではなく、サーバOSのWindows Serverのデスクトップがベースになることだ。そのためユーザーエクスペリエンス(UX:ユーザー経験価値)は、クライアントOSのWindowsがベースになるWVDや一般的なVDI(仮想デスクトップインフラ)より、やや限定される。
MicrosoftはRDSを従来型PCに代わるものとしてではなく、Windows搭載PC向けにアプリケーションを配布する手段として提供する。データセンターであまりRDSが活用されなくなってきた背景には、エンドユーザーが利用するアプリケーションの主流が、PCにインストールする必要のあるアプリケーションから、SaaS(Software as a Service)へと移ってきたことがある。
後編は、WVDの特徴を説明した上で、RDSとWVDを比較する。
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