AWSのRDBMSサービス「Amazon RDS」「Aurora Serverless」の基本的な違いRDBMSの運用を容易にするクラウドデータベース

「Amazon RDS」と「Amazon Aurora Serverless」は、どちらもAWSが提供するRDBMSサービスだ。両サービスの機能と制約を整理した上で、自社に適したサービスを選ぶための判断基準を説明する。

2020年10月13日 05時00分 公開
[Ernesto MarquezTechTarget]

 Amazon Web Services(AWS)はDBMSの機能をクラウドサービスとして提供する「クラウドデータベース」として、リレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)サービスの「Amazon Relational Database Service」(Amazon RDS)と「Amazon Aurora Serverless」を提供している。両者は何が違うのか。本稿は、Amazon RDSとAurora Serverlessの主な違いを確認する。

「Amazon RDS」「Amazon Aurora Serverless」の似ている点と違う点

利用できるRDBMS

会員登録(無料)が必要です

 Amazon RDSは、開発者がデータベースの実行単位である「DBインスタンス」で使うRDBMSやストレージ容量を選べる。使用できるRDBMSには、AWSの「Amazon Aurora」やOracleの「Oracle Database」、Microsoftの「SQL Server」、オープンソースの「PostgreSQL」「MySQL」「MariaDB」などがある。

 Aurora Serverlessは、RDBMSにAmazon Auroraを利用することを明確に意図して設計されている。

ストレージ容量の拡大と縮小

 RDBMSにAmazon Auroraを利用する場合、Amazon RDSも、Aurora Serverlessも必要なストレージ領域を自動的に割り当てる。そのため開発者はストレージを構成する負担を軽減できる。

 Aurora Serverlessは、仮想CPUとメモリを組み合わせた「Aurora Capacity Unit」(ACU)という単位の利用時間に応じて課金する。ストレージ容量のスケールアップとスケールダウンは自動であり、通常30秒以内に完了する。

 Amazon RDSの場合、ストレージ容量の変更は手動の設定が必要だ。そのため最大5分のダウンタイムが発生する可能性がある。Amazon RDSはリードレプリカ(参照専用の複製データベース)の自動スケーリングができるが、DBインスタンスを追加導入する必要があるため、このプロセスには数分かかる。

 Aurora Serverlessの方がストレージ容量の設定が容易で、使用率が急増したり、予測できなかったりするアプリケーションに適していると言える。

各サービスが適する用途

 Amazon AuroraはMySQLやPostgreSQLとの互換性があるため、アプリケーションにはこれらと共通のソースコードを利用できる。アプリケーションがOracle DatabaseやSQL Server、MariaDBなどのRDBMSを必要とする場合はAmazon RDSを使う必要がある。

 Aurora Serverlessは未使用中にストレージ容量をゼロにするオプションを用意している。こうしたオプションは開発環境やテスト環境など、定期的なデータ通信が必要ないアプリケーションに適する。このオプションを本番環境に利用することはお勧めしない。ストレージを再度利用できるようにするには数秒を要し、これによりユーザーエクスペリエンス(UX:ユーザー経験価値)が低下するからだ。

 データベース用のサーバスペックやストレージ容量の拡張と縮小を自動化できる点で、Aurora ServerlessはAmazon RDSより優れた選択肢のように見える。しかし必ずしもそうではない。

 例えば本稿執筆時点では、AWSのバージニア北部リージョン(us-east-1)において、同程度の規模で両サービスを利用した場合、Aurora Serverlessの方が利用料金が高くなりやすい。またAurora Serverlessでは、事前にインスタンスを予約することで割引を受けられる「リザーブドインスタンス」を利用できない。Amazon RDSはリザーブドインスタンスを利用でき、場合によっては利用料金を30%から60%程度削減できる。

 Aurora ServerlessとAmazon RDSのどちらが自社にとって最適かを判断するには、メリットと機能の制約、利用料金への影響を評価することが不可欠だ。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

技術文書・技術解説 ドキュサイン・ジャパン株式会社

導入が進む一方で不安も、電子署名は「契約の証拠」になる?

契約業務の効率化やコストの削減といった効果が期待できることから、多くの企業で「電子署名」の導入が進んでいる。一方で、訴訟問題へと発展した際に証拠として使えるのかといった疑問を抱き、導入を踏みとどまるケースもあるようだ。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

VMware「永久ライセンス」を継続する“非公認”の方法

半導体ベンダーBroadcomは仮想化ベンダーVMwareを買収してから、VMware製品の永久ライセンスを廃止した。その永久ライセンスを継続する非公認の方法とは。

市場調査・トレンド 株式会社QTnet

業種別の利用状況から考察、日本企業に適したクラウドサービスの要件とは?

システム基盤をオンプレミスで運用するか、データセンターやクラウドで運用するかは、業種によって大きく異なる。調査結果を基に、活用の実態を探るとともに、最適なクラウドサービスを考察する。

製品資料 発注ナビ株式会社

商談につながるリードをなぜ獲得できない? 調査で知るSaaSマーケの課題と対策

SaaSサービスが普及する一方、製品の多様化に伴い、さまざまな課題が発生している。特にベンダー側では、「商談につながるリードを獲得できない」という悩みを抱える企業が多いようだ。調査結果を基に、その実態と解決策を探る。

製品資料 株式会社ハイレゾ

GPUのスペック不足を解消、生成AIやLLMの開発を加速する注目の選択肢とは?

生成AIの活用が広がり、LLMやマルチモーダルAIの開発が進む中で、高性能なGPUの確保に問題を抱えている企業は少なくない。GPUのスペック不足を解消するためには、どうすればよいのか。有力な選択肢を紹介する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。