「コンポーザブルインフラ」の用途と、“ただの箱”にしないための準備とは新旧ストレージシステムを比較【後編】

コンポーザブルインフラにはストレージのリソース配分を最適化したり、運用管理を自動化したりできるメリットがある。ただし、ただ導入すればよいわけではない。導入時に考慮すべき点とは。

2020年10月13日 05時00分 公開
[Robert SheldonTechTarget]

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 「コンポーザブルインフラ」の歴史はまだ浅い。ソフトウェアによってインフラのコンポーザビリティー(構成可能性)を実現するコンポーザブルインフラのアーキテクチャは、発展途上にある。業界標準が定まっていないため、各ベンダーは独自のルールに従ってコンポーザブルインフラを定義している状態だ。そのため簡単に他社製品へ乗り換えることができなくなる「ベンダーロックイン」の懸念もある。

 コンポーザブルインフラの導入や運用には専門知識が求められる。ストレージをはじめとする物理リソースの分離性というコンポーザブルインフラのメリットを享受したい組織は、コンポーザブルインフラに合わせて新しい考え方を取り入れ、業務の進め方を転換することが重要だ。

コンポーザブルインフラの主な用途と「求められる準備」

 従来、アプリケーションの開発、テスト、導入のライフサイクルは個別の作業として実行され、リソースは各フェーズに応じて配分されてきた。最近は、開発を高速化する継続的インテグレーション/継続的デリバリー(CI/CD)といった手法を取り入れ、アプリケーション開発のライフサイクルをまとまった取り組みとして推進する動きが広がっている。こうした場合は、自動的にリソースを割り当てることが重要になるため、コンポーザブルインフラが適している。コンポーザブルインフラのメリットを享受するには、こうした業務フローの転換まで考慮する必要がある。

 コンポーザブルインフラはさまざまな用途にメリットをもたらす。例えば機械学習など人工知能(AI)技術の活用においては、データ処理負荷やデータ流入量の変動に対処するために、動的なリソース割り当てが必要になる場合がある。CI/CDなどDevOps(運用チームと開発チームが協調して開発を進めること)の手法においてコンポーザブルインフラを活用する場合、Infrastructure as Code(IaC:コードとしてのインフラ)の手法も併用すると設計や運用作業を効率化できるメリットも得られる。開発だけではなく、IT部門がインフラの運用管理を自動化したい場合にもコンポーザブルインフラが役立つ。

 ストレージ要件を予測できない場合、あるいは継続的に変化するアプリケーションを運用する場合、コンポーザブルインフラを検討すべきだ。アプリケーション要件が変動せず安定していて、リソースの再構成や再割り当てをする必要がない場合は、NAS(ネットワーク接続型ストレージ)やSAN(ストレージエリアネットワーク)、DAS(直接接続型ストレージ)といった従来型アーキテクチャのストレージシステムで問題ない。

コンポーザブルインフラへの移行

 従来型のストレージシステムは最新のアプリケーション向けには設計されていない。最新のアプリケーションはますます動的になり、さらにデータの容量増大や多様化も進んでいる。IT部門はそうした変化に対処する必要がある。

 コンポーザブルインフラの歴史はまだ浅い。汎用(はんよう)のハードウェアでコンポーザビリティーを実現できるのはまだ先の話になりそうだ。とはいえコンポーザブルインフラの製品を提供するベンダーの動きは広がっている。そうした中でIT部門が自らに問うべき問題は、リソースの割り当てにおいて新たな考え方を導入する準備ができているかどうかだ。

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