IBMが「OpenShift」「Ansible」などのRed Hat製品を取り込む“本当の狙い”「Power Systems」の変化に潜むIBMの狙い【後編】

IBMはサーバ製品群「IBM Power Systems」と、「OpenShift」や「Ansible Automation」といったRed Hat製品を組み合わせた提案を進めている。その狙いとは。

2020年10月14日 05時00分 公開
[Ed ScannellTechTarget]

 IBMはサーバ製品群「IBM Power Systems」に従量課金型の料金体系を取り入れてクラウドサービスとの親和性を高め、オンプレミスのインフラとクラウドサービスを組み合わせたハイブリッドクラウドでのアプリケーション運用を支援しようとしている。それと同時に、同社はIBM Power Systemsと併せて、Red Hatのコンテナ管理システム「Red Hat OpenShift Container Platform」(OpenShift)や構成管理ツール「Red Hat Ansible Automation Platform」(以下、Ansible Automation)、IBMのマルチクラウド管理ツール「IBM Cloud Paks」をユーザー企業に提案しようとしている。何が狙いなのか。

 調査会社IDCのピーター・ルッテン氏は「IBMにとって、IBM Power Systemsとクラウドサービスを連携させてアプリケーションをうまく運用できるようにすることが重要だ」と話す。IBMはオンプレミスのインフラとクラウドサービスの双方に注力しているからだ。「IBM i」や「Linux」を搭載するIBM Power SystemsとOpenShiftを連携させることで「オンプレミスのインフラ側に、コンテナを使ったクラウドネイティブのアプリケーションを導入しやすくしている」とルッテン氏は語る。

IBM製品とRed Hat製品の連携の狙い

会員登録(無料)が必要です

 「Ansible AutomationをIBM製品と連携させることで、IT運用自動化を企業の組織内に広げようとしている」と、IBMのダイラン・ボディー氏は話す。Ansible Automationによって、IBM Power Systemsだけでなくメインフレーム「IBM Z」やx86サーバにまたがる統合的な運用自動化が実現する。「組織内に一貫した自動化のスキルとプロセスがあれば、事業部門はトレーニングのコストを削減でき、IT部門は新しい開発プロジェクトに取り組む余裕が生まれる」とボディー氏はそのメリットを話す。

 IBMは同社のクラウドサービス群「IBM Cloud」でより多くのアプリケーションを運用できるように、IBM Cloudの機能拡張も進めている。同社がIBM Cloudを運用するデータセンターには、インメモリデータベースシステム「SAP HANA」の運用環境としてSAPの認定を取得しているサーバもある。

 Red HatとIBMが大部分において独立した運営を保ちつつ、両者の製品やサービスを組み合わせて提供する動きを歓迎するアナリストもいる。調査会社Gartnerのダニエル・バウワーズ氏は「Red HatはOpenShiftとAnsible Automationで大きな実績を築いている」と指摘。IBMが自社の適切な製品に、こうしたRed Hatの実績を取り入れることができれば「両社にとって大きなメリットになる」とみる。

 現在のような新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が広がる中では「クラウドサービスの強化と、低コストのハードウェア製品の組み合わせを訴求する絶好の機会になる」とIBMの関係者は考えているようだ。IBMのスティーブ・シブリー氏は「IT運用に混乱をもたらす事態に直面したことで、回復力を高める方法を見直す企業の動きが広がっている」と言う。「ハイブリッドクラウドによる機能強化は、大量のデータを扱うアプリケーションに適した運用環境を見つける方法の一つになる」(シブリー氏)

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

「SATA接続HDD」が変わらず愛される理由とは

HDDの容量が30TB超になると同時に、ストレージ技術はさまざまな進化を続けている。そうした中でもインタフェースに「SATA」(Serial ATA)を採用したHDDが変わらずに使われ続けている。なぜなのか。

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

IOPSが5倍に向上&コストも80%削減、エクシングが選んだ大容量ストレージとは

カラオケ業界が直面するデータ増に対応すべく多くのストレージを試し続けた結果、4社27台の製品のメンテナンスに悩まされていたエクシング。この問題を解消すべく、同社は大容量かつコスト削減効果に優れた、新たなストレージを導入した。

製品資料 プリサイスリー・ソフトウェア株式会社

データソート性能向上でここまで変わる、メインフレームのシステム効率アップ術

メインフレームにおけるデータソート処理は、システム効率に大きく影響する。そこで、z/OSシステムおよびIBM Zメインフレーム上で稼働する、高パフォーマンスのソート/コピー/結合ソリューションを紹介する。

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

従来ストレージの約8倍の容量を確保、エルテックスが採用したストレージとは

ECと通販システムを統合したパッケージの開発と導入を事業の柱とするエルテックスでは、事業の成長に伴いデータの容量を拡大する必要に迫られていた。そこでストレージを刷新してコスト削減や可用性の向上などさまざまな成果を得たという。

市場調査・トレンド プリサイスリー・ソフトウェア株式会社

クラウド統合を見据えたメインフレームのモダナイズ、3つの手法はどれが最適?

長年にわたり強力かつ安全な基盤であり続けてきたメインフレームシステム。しかし今では、クラウド戦略におけるボトルネックとなりつつある。ボトルネックの解消に向け、メインフレームを段階的にモダナイズするアプローチを解説する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。