コミュニケーションツールを複数併用する際のチップス【中編】
コミュニケーションツールを1つにしたい人、自由に選びたい人、それぞれの事情
複数のコミュニケーションツールを使い分けるにせよ、統一するにせよ、どちらにも運用管理の限界がある。IT部門と従業員で優先したいニーズが異なる中、ツールの利用方針をどう立てればよいのか。
前編「なぜコミュニケーションツールは統一できないのか 放置したら起きる“災厄”は」に続き、中編となる本稿は、コミュニケーションツールに関してIT部門とエンドユーザーが直面している課題を解説する。
大抵の企業は、ほとんどなし崩し的に複数のコミュニケーションツールを併用している。ガバナンスや管理コストの問題から、IT部門は「ツールは1種類に限定したい」と考えているが、現実は難しい。その理由は何なのか。
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複数のシステムを使っていると、従業員からIT部門への要求が増えやすくなる。特に従業員が個人的な目的で一般消費者向けのアプリケーションを使い始めたときに、この問題は顕著になる。あるアプリケーションが他のアプリケーションとうまく連携しなかったり、そもそも機能が乏しかったり、新たなセキュリティリスクが生まれたり、といったことからトラブルが生じる場合もある。
複数のコミュニケーションツールが使えれば従業員は便利だが……
従業員にとってコミュニケーションツールが複数使えることは便利だ。だがIT部門にとってはこうした問題につながる可能性がある。そのため個人的な事情でコミュニケーションツールを次々に導入する行為は可能な限り慎むよう、従業員に要請しなければならない。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)発生から1年以上が経過し、IT部門とテレワーカーはそれぞれの観点からコミュニケーションツールを選択してきた。本命に落ち着くまで複数のコミュニケーションツールを渡り歩いたテレワーカーもいるだろう。こうした事態が起こりやすいのがユーザーフレンドリーなコミュニケーションツールの欠点と言える。特に無料ツールほどそうだ。従業員は急きょテレワークを迫られ、慌ててコミュニケーションツールを選んだのかもしれない。とはいえ、何かシステムが変わればIT部門の仕事が増えるものだ。
何を使うにしても、組織として複数のコミュニケーションツールを利用可能な状態にするには、全てが連携するようIT部門が各コミュニケーションツールを幅広く管理する必要がある。パスワードや使用ポリシー、管理・制御、コンプライアンスといった基本的な責任をIT部門が負うとすれば、さらなる予算や労力が必要になる可能性もある。複数のコミュニケーションツールを使えるようにしたところでスケールメリットは得られないため、ライセンスのコストも考えなければならない。結果、コミュニケーションツールへの投資が必要以上に高くなる恐れがある。
コミュニケーションツールに関するエンドユーザーの課題
エンドユーザー、つまり従業員の視点に立つと、ツールごとにユーザーエクスペリエンス(UX:ユーザー経験価値)が異なることがさまざまな課題を生む。
「Web会議が最適だ」というエンドユーザーもいれば、「モバイルデバイスを使った共同作業が好きだ」と考えるエンドユーザーもいる。技術に詳しいエンドユーザーはUXを自分好みにカスタマイズする方法を探すかもしれない。単一のコミュニケーションツールでこうしたニーズ全てに応えることは恐らく不可能だ。サイロ化した要望をつなげるのに多大な労力を必要とし、コミュニケーションが複雑化する恐れがある。これは「エンドユーザーの生産性を高める」というコミュニケーションツールの本質的な価値を損なうため、大きな問題だ。
生産性のために一貫したUXを実現しようとすると、これに関連する問題が生じる。チャット、カレンダーとの連携、会議の管理といった基本機能と同様に、モバイルデバイス用機能やWebブラウザ拡張機能などもコミュニケーションツールごとに異なる。コミュニケーションの主なチャネルが電話ならば、どのコミュニケーションツールでも標準でPSTN(公衆交換電話網)を利用できるわけではないことを知っておく必要がある。
ユニファイドコミュニケーション(UC)の価値は「一貫したUX」だ。使用するコミュニケーションツールが増えるほど全体的なコミュニケーションを円滑にするのは難しくなる。IT製品の意思決定者は、複数ツールにまたがるエンドユーザーの作業を想定して支援するためのチュートリアルやトレーニング資料などを用意し、こうした混在環境に手厚い配慮をしなければならない。パンデミックによって多くの従業員がテレワークをしている場合は、特にこれが重要だ。1人で仕事をしていると、同僚と簡単に情報交換をしたり、コミュニケーションツールをすぐにテストするために同僚のデスクまで足を運んだりすることはできない。オンラインである程度は工夫できても、実際にはやる気にならないものだ。
後編は、コミュニケーションツールを複数併用する場合の戦略の立て方を解説する。
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