ネットワーク刷新の失敗を避けるには、将来的なニーズの把握やコスト管理など、基本的な取り組みが重要になる。具体的に踏むべきステップについて順を追って紹介する。
ネットワークの最新化を図る際、企業が初期に取り組むべき点を前編「ネットワーク管理者が考えるべき『なぜネットワーク刷新が必要なのか』」で紹介した。本稿は将来的なニーズを見越したネットワークにするためにどのような点を検討すべきなのか、具体的にどのような導入のステップを踏むべきなのかをより具体的に説明する。
前編で紹介した通り、ネットワークの最新化に当たってまずはアプリケーションやネットワークの利用状況を分析する。その結果から、どのようなハードウェアやソフトウェア、クラウドサービスを利用することが適しているのかを検討できる。
例えばテレワークの時間が増えている従業員にとっては、特定のビジネスクリティカルなアプリケーションへの接続先として、社内LANよりもパブリッククラウドの方が適している可能性がある。この場合に問題になるのは、セキュリティに穴が生まれてしまう懸念だ。クラウドサービスの利用を前提にしたセキュリティの仕組み「SASE」(Secure Access Service Edge)のツールは、こうした穴を埋めることをその目的にしている。
SASEのツールを使うことで、既存のセキュリティポリシーをテレワーク中の従業員にも拡張し、セキュリティの穴を埋めることができる可能性がある。機密データや知的財産を紛失や盗難からより確実に保護するには、こうした新たな対策が必要だ。
どのようなインフラを構築する必要があるのかは、ビジネスの目標に依存する。そのためインフラ設計の担当者は、事業部門がそのインフラをどのように使うつもりなのかを理解する必要がある。
典型的な例が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)だ。事業部門がテレワークを無期限に継続することを計画している場合、企業は将来にわたって従業員が地理的に分散する状況を想定してインフラを設計しなければならない。この場合、一部の企業は自前のオンプレミスデータセンターを段階的に廃止し、クラウドサービスへの移行を優先するようになるだろう。そうではなく将来的に従業員がオフィス勤務に戻ることを想定しているのであれば、クラウドサービスとオンプレミスデータセンターを必要に応じて使い分けるハイブリッドクラウドの選択肢が残るだろう。
最後に、どのような新しいインフラを採用するのかが決まったら、それに必要なハードウェアやソフトウェア、クラウドサービスの選択肢を調査する。
これから先はできる限り設備投資を抑えて、OPEX(運用経費)でインフラを利用することを優先する企業が増えるだろう。OPEXの導入モデルにはさまざまなメリットがある。まず構築に必要な初期コストを抑制できる。拡張や縮小が必要になった場合に迅速に変更を加えることができる良さもある。
インフラの最新化に必要なコストを試算する際は、新しい技術やサービスの購入と実装だけに限定せず、継続的な運用保守やトレーニングにかかるコストも計算に含めることが重要だ。
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