「Wi-Fi 6」と「昔の無線LAN」の違い “速度”と“距離”はどう変わる?無線LANの特性を理解する【前編】

無線LANの「データ伝送速度」や「到達距離」は規格にどのように関係しているのか。これら2つの観点で、「Wi-Fi 6」の検討において見落としてはいけない無線LANの特性とは。

2021年12月24日 05時00分 公開
[Lee BadmanTechTarget]

関連キーワード

Wi-Fi | 無線LAN | ネットワーク


 「Wi-Fi 6」(IEEE 802.11ax)が「Wi-Fi 5」(IEEE 802.11ac)に替わる無線LAN規格として使われ始めている。無線LANの基本的な特性を押さえることで、Wi-Fi 6のポテンシャルを引き出すことが可能だ。

 ほとんどの人は、Wi-Fi 6とWi-Fi 5の具体的な違いを知らない。例えばWi-Fi 6にすると「データ伝送速度が向上する」程度のことは知っていたとしても、「電波の到達距離」の影響について十分に理解している人は多くない。

 無線LANの到達距離は、利用する周波数帯の特性だけではなく、出力の大きさやアンテナの設置パターン、利用空間の状況にも左右される。Wi-Fi 5とWi-Fi 6が周波数帯として同じ5GHz帯を利用する場合、基本的には無線の到達距離に大きな違いは出ないと考えられるが、話はそれで終わらない。

「Wi-Fi 6」のデータ伝送速度、到達距離はどう変わったのか?

 アンテナと出力をどのように組み合わせたとしても、電波の到達距離には限界がある。無線LANの利用では到達距離よりもデータ転送速度の方が大切だ。無線LANは到達距離を極限まで広げようとはせず、特定のエリアに限定してできるだけデータ伝送速度を高めることを重視する。

 無線LANは特定の到達距離の中で、データ伝送速度を向上させる方向へと進化してきた。例えば「IEEE 802.11b」の電波の到達範囲が直径300フィート(約91メートル)だったとする。IEEE 802.11bは1999年に標準化した無線LAN規格で、最大のデータ伝送速度は11Mbpsだ。この規格の電波が辛うじて届く末端のエリアでは、クライアント端末は1Mbps程度でしかデータを受信できないと考えられる。これと同じ条件で、最大のデータ伝送速度が54Mbpsの「IEEE 802.11g」を使ったとする。データ伝送速度は6Mbps程度になるだろう。最大のデータ伝送速度が300Mbpsである「IEEE 802.11n」の場合、同じ条件下のデータ伝送速度は30Mbps程度になるはずだ。

 こうした特定の条件下におけるデータ伝送速度の違いが無線LAN規格の要点になる。無線LAN規格は、世代が新しくなるたびに、伝送効率を高める技術、電波の干渉を減らす技術、データ送受信処理の効率を高める技術などを盛り込んできた。

 Wi-Fi 6の場合はどうだろうか。過去の無線LAN規格と同じで、Wi-Fi 6も出力の向上、つまり電波の到達範囲の拡大を目的にはしていない。Wi-Fi 6は利用する周波数帯を増やす、同時に使用するデータ送受信用のアンテナを増やす、同時に発生する複数台のクライアント端末のデータ送受信を効率化する、といった機能を搭載する。これらにより、同じ電波の到達範囲内において無線LANをより使いやすくすると同時に、よりデータ伝送速度を高める工夫をしている。こうした改善の結果として、場合によっては「電波の到達範囲が広がった」と勘違いすることもあるだろう。

 こうして簡単に説明しただけでも明らかなことは、現代の無線LANの進化は決して単純なものではない、ということだ。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

ITmedia マーケティング新着記事

news079.jpg

狙うは「銀髪経済」 中国でアクティブシニア事業を展開する企業とマイクロアドが合弁会社を設立
マイクロアドは中国の上海東犁と合弁会社を設立。中国ビジネスの拡大を狙う日本企業のプ...

news068.jpg

社会人1年目と2年目の意識調査2024 「出世したいと思わない」社会人1年生は44%、2年生は53%
ソニー生命保険が毎年実施している「社会人1年目と2年目の意識調査」の2024年版の結果です。

news202.jpg

KARTEに欲しい機能をAIの支援の下で開発 プレイドが「KARTE Craft」の一般提供を開始
サーバレスでKARTEに欲しい機能を、AIの支援の下で開発できる。