無線LANの「データ伝送速度」や「到達距離」は規格にどのように関係しているのか。これら2つの観点で、「Wi-Fi 6」の検討において見落としてはいけない無線LANの特性とは。
「Wi-Fi 6」(IEEE 802.11ax)が「Wi-Fi 5」(IEEE 802.11ac)に替わる無線LAN規格として使われ始めている。無線LANの基本的な特性を押さえることで、Wi-Fi 6のポテンシャルを引き出すことが可能だ。
ほとんどの人は、Wi-Fi 6とWi-Fi 5の具体的な違いを知らない。例えばWi-Fi 6にすると「データ伝送速度が向上する」程度のことは知っていたとしても、「電波の到達距離」の影響について十分に理解している人は多くない。
無線LANの到達距離は、利用する周波数帯の特性だけではなく、出力の大きさやアンテナの設置パターン、利用空間の状況にも左右される。Wi-Fi 5とWi-Fi 6が周波数帯として同じ5GHz帯を利用する場合、基本的には無線の到達距離に大きな違いは出ないと考えられるが、話はそれで終わらない。
アンテナと出力をどのように組み合わせたとしても、電波の到達距離には限界がある。無線LANの利用では到達距離よりもデータ転送速度の方が大切だ。無線LANは到達距離を極限まで広げようとはせず、特定のエリアに限定してできるだけデータ伝送速度を高めることを重視する。
無線LANは特定の到達距離の中で、データ伝送速度を向上させる方向へと進化してきた。例えば「IEEE 802.11b」の電波の到達範囲が直径300フィート(約91メートル)だったとする。IEEE 802.11bは1999年に標準化した無線LAN規格で、最大のデータ伝送速度は11Mbpsだ。この規格の電波が辛うじて届く末端のエリアでは、クライアント端末は1Mbps程度でしかデータを受信できないと考えられる。これと同じ条件で、最大のデータ伝送速度が54Mbpsの「IEEE 802.11g」を使ったとする。データ伝送速度は6Mbps程度になるだろう。最大のデータ伝送速度が300Mbpsである「IEEE 802.11n」の場合、同じ条件下のデータ伝送速度は30Mbps程度になるはずだ。
こうした特定の条件下におけるデータ伝送速度の違いが無線LAN規格の要点になる。無線LAN規格は、世代が新しくなるたびに、伝送効率を高める技術、電波の干渉を減らす技術、データ送受信処理の効率を高める技術などを盛り込んできた。
Wi-Fi 6の場合はどうだろうか。過去の無線LAN規格と同じで、Wi-Fi 6も出力の向上、つまり電波の到達範囲の拡大を目的にはしていない。Wi-Fi 6は利用する周波数帯を増やす、同時に使用するデータ送受信用のアンテナを増やす、同時に発生する複数台のクライアント端末のデータ送受信を効率化する、といった機能を搭載する。これらにより、同じ電波の到達範囲内において無線LANをより使いやすくすると同時に、よりデータ伝送速度を高める工夫をしている。こうした改善の結果として、場合によっては「電波の到達範囲が広がった」と勘違いすることもあるだろう。
こうして簡単に説明しただけでも明らかなことは、現代の無線LANの進化は決して単純なものではない、ということだ。
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