パンデミックはテレワーク導入を後押しし、プロジェクトを主導したCIOの発言力を強めるきっかけにもなった。この経験を通じて積み重ねた信頼を維持し、CIOがCEOの戦略的技術アドバイザーになるには。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)後に、テレワーク関連製品をはじめとするIT導入の機運が高まった。このことは最高情報責任者(CIO)に影響力と発言力をもたらすきっかけにもなった。パンデミックの間に主導したプロジェクトの実績や信頼関係を生かし、CIOが最高経営責任者(CEO)に重要な技術のアドバイスを提供する「戦略的パートナー」になるには、どのような心構えと取り組みが必要だろうか。
従業員のテレワークを実現するという点で、ITは企業がパンデミックに適応するのに重要な役割を果たした。同様に、CIOの存在も重要な鍵だった。
コンサルティング会社Deloitte Consultingで政府公共サービス部門の最高技術責任者(CTO)を務めるスコット・バックホルツ氏は「パンデミックがCIOやIT部門を英雄の座に押し上げたのは間違いない。なぜならCIOとIT部門が主導したテレワーク移行作業は、どのような規模の組織でもほんの数日しか、かからなかったからだ」と語る。
CIOが「英雄としての影響力」を保ち続けるには、自身の役割を理解し、CEOの協力を得ながらその役割を共創する方法を理解する必要がある。
「現代のCIOは、CEOのアドバイザーとしての役割を担っている」と語るのはコンサルティング会社PricewaterhouseCoopers(PwC)でクラウドおよびデジタルマネージングパートナーを務めるダン・プリースト氏だ。同氏によればCIOは、企業にとってのITの役割を「企業のビジネスを支援する一つの手段」から「ビジネス戦略の中核」に変えられるかどうかを左右する存在となる。
この2つにはどのような違いがあるのだろうか。
ITが「ビジネスを実現するための一つの手段」だと見なされているとき、経営戦略を決めるのはビジネスリーダーだ。「こうした状況では、ITは手段とサポートの役割として見てもらえはするが、それ以上は期待されない」とプリースト氏は説明する。
一方で、ITがビジネス戦略の中核を担うようになると、CIOはCEOと同じ議論のテーブルに着くことになる。そしてデータや技術、クラウド活用を戦略の中核に据え、新しいビジネスモデルや働き方の定義を共に考える。「ビジネスありきで後付けのIT活用との違いは、これだ」(プリースト氏)
中編は「『生き残り』モードから『成長モード』に切り替える」「理想と現実のバランスを取る」の2つを紹介する。
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