SSDとNVMe、仮想化が出会ってストレージは変わったなぜNVMeストレージが台頭したのか【後編】

NVMeなどのストレージ技術の台頭、仮想化の普及といった流れの中で、ストレージに求められるものも変わってきた。技術動向を扱った書籍を基に、注目点を抜粋して紹介する。

2022年06月15日 05時00分 公開
[Ryan ArelTechTarget]

 ストレージインタフェース規格「NVMe」(Non-Volatile Memory Express)の重要性が高まっている――そう指摘するのは、技術動向を扱った書籍『Building a Future-Proof Cloud Infrastructure』の著者、シルバーノ・ガイ氏だ。ガイ氏はこの書籍の中で、SSDとNVMe、NVMeのネットワークへの拡張に対する関心がなぜ高まってきたのかを解説している。以降はその一部を抜粋して紹介する。

リモートストレージと仮想化、NVMeの出会い

 大規模なサーバクラスタの運用者は、“規模の経済”を追求するためにコンポーネントの分割を検討するようになった。ストレージは分割候補として最も自然なコンポーネントだった。ネットワークを介したとしても、ストレージのレイテンシ(遅延)は一般的に許容できるものになるからだ。

 SSDを使うことでストレージの遅延を劇的に減少させる場合、ネットワークにも改善が必要になる。その結果、ファイバーチャネル(光ファイバーや同軸ケーブルを使う接続規格)の登場とともにストレージ分散化の流れが始まり、大規模なクラウドサービスの普及によってその流れは加速した。こうしてリソースの集約とコスト削減のチャンスが生まれた。

 リモートストレージ(コンピュータがネットワークを介して接続するストレージ)を使う場合の一般的な管理手法の一つは、ハイパーバイザーによってストレージを仮想化し、仮想マシンに対してローカルストレージ(自コンピュータのストレージ)をエミュレーション(模倣)することだ。

 ただしハイパーバイザーによるストレージ仮想化が適さない場合もある。例えば物理サーバでテナント(リソースの管理単位)のOSが稼働する場合は、エミュレーションをするハイパーバイザーが存在しない。この場合は、ソフトウェアによって仮想的なハードウェアを実装するハードウェアエミュレーションの手法が一般的になりつつある。

 ハードウェアエミュレーションはリモートストレージへのネットワーク接続を仮想化し、それを物理サーバにローカルストレージとして見せる。この際の典型的な手法に当たるのが、「NVMe over Fabrics」(NVMe-oF)によってリモートストレージに接続し、NVMe接続のローカルストレージをエミュレーションすることだ。NVMe-oFとは、NVMeをイーサネットやファイバーチャネルに拡張する仕組みを指す。

 ローカルストレージのエミュレーションにおけるデータプレーン(データの転送を担う役割)の実装方法として、「スマートNIC」を使用する方法がある。スマートNICとはプロセッサを搭載したネットワークインタフェースカードを指す。ストレージやセキュリティに関するコンピューティングの負荷を、CPUからスマートNICにオフロードできる。スマートNICは通常、データプレーンをプログラム可能なプロセッサを搭載している。

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