ストレージのデータ転送速度やIOPSといったパフォーマンスを高めるために、企業は何に着目すべきなのか。ストレージインタフェースの違いやパフォーマンスを高めるためのポイントとは。
在宅勤務が普及したことで、データ転送速度やIOPS(1秒当たりの入出力数)などのパフォーマンスがストレージの課題として大きくなった。企業はSSDよりも低コストで済むHDDを依然として使いたがっているが、ストレージの課題を解消するには、コスト以外にも目を向けなければならない。
本稿で紹介するのは、第一にストレージインタフェース規格である「SATA」(Serial ATA)や「SAS」(Serial Attached SCSI)、「NVMe」(Non-Volatile Memory Express)の基本だ。専門家の話を基に、今後知っておくべきストレージの仕組みを紹介する。
ストレージインタフェース規格をコストで比べると、NVMeよりもSATAやSASの方が低コストになる。その半面、NVMeはパフォーマンスが向上する。ストレージの高いパフォーマンスに対する需要が高まる中では、NVMeの必要性が高まっている。
技術動向を扱った書籍『Building a Future-Proof Cloud Infrastructure』の著者、シルバーノ・ガイ氏は、NVMeはストレージインタフェース規格「SCSI」(Small Computer System Interface)とは別の選択肢として登場したものだと説明する。「NVMeとSCSIは技術的には何の関係もない。NVMeが登場したのはビジネス的な決定だった」とガイ氏は述べる。同氏によれば、SCSIの規格と比べた場合のNVMeの利点は、大量のキュー(命令の列)を処理できる並列処理にある。これによってNVMe接続のSSDはデータ転送やIOPSが向上する。
NVMe、特にNVMeをイーサネットとファイバーチャネル(光ファイバーや同軸ケーブルを使った接続規格)に拡張する「NVMe over Fabrics」(NVMe-oF)を採用する企業の動きが加速している。クラウドストレージも、NVMeの利用を後押ししている。Meta(旧Facebook)やMicrosoftなどのITベンダーがクラウドストレージにNVMeを採用し始めたのは、パフォーマンスが向上するからだった。NVMe採用の動きは、今後一段と広がると考えられる。
システム利用時のレイテンシ(遅延)を低下させることを企業は望んでいる。ガイ氏は前述の書籍の中で、ストレージがディスアグリゲーション(コンポーネントの分離)の対象になるのは自然なことだと指摘する。「企業はコンピューティングとストレージを分離させることで、パフォーマンスを低下させることなくシステムを拡張できる可能性が高まる」(同氏)。
企業が保有するデータ量が増加することも、NVMeへの関心が高まる背景にある。パフォーマンスを犠牲にすることなくストレージを拡張するために、企業はNVMe-oFを含むNVMeの活用に着目しているのだ。
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