CD、DVD、Blu-rayの次は「プラズモニックストレージ」 過去の円盤との違いは?新種ストレージの台頭はいつになる?【第3回】

円盤状のストレージと言えば、CDやDVD、Blu-ray Discがある。その形状を踏襲した新しいストレージが「プラズモニックストレージ」だ。過去の技術と何が違い、どのような利点が見込めるのか。

2022年08月08日 08時15分 公開
[Robert SheldonTechTarget]

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 光学ストレージの容量や読み取り速度を大幅改善できる可能性のあるストレージ技術がある。「表面プラズモン」(金属表面における自由電子の集団振動)で色を生成し、データの読み取りに応用する「プラズモニックストレージ」だ。

 パデュー大学(Purdue University)研究チームの照準は明らかに、光学ストレージの一種である「Blu-ray Disc」の代替にある。研究チームが開発したプラズモニックストレージの試作品は、直径120ミリのディスク(記録媒体)を使用し、回転数は5000rpm(回転毎分)だった。これはBlu-ray Discの仕様を踏襲したものだと言わざるを得ない。ただし見込める利点はBlu-ray Discとは違う。

従来のディスクと「プラズモニックストレージ」の違いは?

 Blu-ray Discをはじめとした光学ストレージの記録媒体は、平らで丸い形状を採用している。データはディスクのピット(突起部分)とランド(平らな部分)を使って記録される。ピットは光を反射せず、ランドは光を反射する。データは、ディスクの中心付近から放射状に書き込まれる。データを読み取る際は、回転するディスクにレーザーを当てる。反射率の違いによって、データを表す「0」と「1」が決まる。CDは700MB、DVDは8.5GB、Blu-ray Discは128GBの容量を持つ製品が出ている。

 データを記録する材料は、用途によって異なる。映画1本の視聴に使われる「WORM」(Write Once Read Many:書き込み1回、読み込み複数回)のディスクは、アルミホイルのような安価な材料を使う。ただしWORM用のディスクには、記録用の材料に有機色素が追加されていることがある。一方、書き換え可能なディスクは熱によって状態が変化する相変化材料を使っているため、消去と書き換えが可能だ。

 プラズモニックストレージはピットとランドを使った構造ではなく、表面プラズモンによって生成する色を使用する。パデュー大学が開発しているプラズモニックストレージは、まだ研究の初期段階にあり、WORM用に照準を絞っているため、単一の材料を使用している。ディスクには、光の角度を調整するためのアルミニウム製メタサーフェスが含まれる。メタサーフェスとは、自然界には存在しない挙動をする人工物質であるメタマテリアルを2次元化したものだ。このメタサーフェスには、光を反射して色を生成するナノアンテナ(ユニットセルとも)を配列。研究チームは、この構成によってBlu-ray Discよりも最大40%の容量増加ができると見積もっている。

 研究チームはプラズモニックストレージの試作品へのデータ記録の際、電子線リソグラフィー(半導体集積回路の形成にも使われる加工技術)を使用した。商業化の際は別の方法を使う可能性もある。

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