HDDが市場から消えないこれだけの理由 “高速化時代”が到来?SSDの利点を取り入れるHDD【後編】

HDDに対する支配的なイメージは、「容量単価にはメリットがあるが、パフォーマンスには期待しない」だ。これを変える可能性のある動きがある。具体的に見てみよう。

2022年08月24日 05時00分 公開
[Adam ArmstrongTechTarget]

関連キーワード

ハードディスク | SSD | ストレージ


 SSD用のストレージプロトコルとして使われてきた「NVMe」(Non-Volatile Memory Express)を、HDDで利用する動きがある。その狙いはどこにあるのか。SSDに比べて“遅い”と考えられてきたHDDに、どのような変化が起きるのか。HDDとSSDの立ち位置を踏まえて考える。

だからHDDはなくならない

 ストレージベンダーのSeagate Technologyは、NVMeをHDDで利用する技術を開発し、2021年に発表した。それに続き、ストレージベンダーStorONEは、既存のHDD製品を「NVMe-oF」(NVMe over Fabrics)のネットワークに接続するためのソフトウェアを公開した。NVMe-oFとは、NVMeをイーサネットやファイバーチャネルに拡張する仕組みを指す。

 調査会社IDCのアナリストであるエド・バーンズ氏によると、NVMe-oFのネットワークにHDDを接続する技術は有望だ。インフラの構成が複雑になる懸念はあるが、データ転送や読み書きの速度を高めるメリットが見込めるという。ただしバーンズ氏は「ネットワークだけではなく、HDDのインタフェースもNVMeにするのが理想だ」と話す。

 各ストレージベンダーがHDDでNVMeを利用するための技術に注力するのは、HDDのニーズが依然として強いからだ。SSDだけではなく、HDDでもNVMeを使えるようにすれば、ストレージベンダーは競合他社よりも優位に立てる可能性がある。

 ユーザー企業は、依然としてHDDにより多くのデータを保管する傾向にある。バーンズ氏は「当社の顧客と話をしていて、HDDとSSDのそれぞれで保管するデータの割合はおおむね7対3だということが分かった」と語る。この背景にあるのは、ユーザー企業が「コールドデータ」(利用頻度が低いデータ)や「ウォームデータ」(コールドデータより利用頻度は高いが頻繁には利用しないデータ)の保管用としてHDDを使っていることだ。こうしたデータは、SSDよりも容量単価が安価なHDDで保管するのが合理的だと同氏はみる。

 容量で比較した場合、HDDはSSDよりも費用対効果に優れている。ただしデータの読み書き速度をはじめとしたパフォーマンスも重要だ。StorONEの狙いはそこにある。同社によれば、NVMe-oFのネットワークにHDDを接続することでHDDでもNVMeによるパフォーマンスの改善が見込める。

 StorONEのソフトウェアを使用すると、例えば

  • サーバに複数のHDDを接続する「JBOD」(Just a Bunch Of Disks)
  • サーバに複数のSSDを接続する「JBOF」(Just a Bunch of Flash)

など、複数種類のストレージをNVMe-oFの同一ネットワークで扱うことが可能になる。JBODやJBOFのストレージは、ストレージインタフェース規格「SAS」(Serial Attached SCSI)で接続している場合でもNVMe-oFで利用可能だという。IOPS(1秒当たりのデータ読み書き数)の改善が見込めると、同社はその利点を説明する。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

ITmedia マーケティング新着記事

news145.jpg

女子スポーツが生み出す収益は2024年に10億ドル以上 広告主や大手広告代理店も本気に
WPP傘下の大手メディアエージェンシーGroupMは、AdidasやUnileverなどのクライアントの支...

news011.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2024年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news131.jpg

「ダークパターン」の認知は2割にとどまる――クロス・マーケティング調査
調査会社のクロス・マーケティングが実施したダークパターンに関する調査(2024年)の結...