メジャー強打者はなぜ「4番」じゃないのか データが変える野球の常識データ分析が変えた野球の常識【第2回】

MLBでは、その巧拙が試合の勝敗に大きな影響を及ぼすほど、データ分析が重要な役割を担っている。野球界に存在した“常識”も、データ分析が塗り替えてきた。幾つかの例から、データ分析の影響を見ていこう。

2022年09月07日 05時00分 公開
[Eric AvidonTechTarget]

 米プロ野球のMLB(メジャーリーグ機構)では21世紀の初めに、打者の打率、本塁打数、打点、投手の勝利数、防御率、奪三振数といった、それまでの指標にとどまらないデータの分析が定着し始めた。球団にとっては、分析部門があることが大きな強みになった。

「強打者は4番」は“過去の常識”?

 2000年代初頭を過ぎ、オークランド・アスレチックス(Oakland Athletics)などのMLB所属球団が、映画『Moneyball』(マネーボール)で有名になった手法を採用するようになった。それは、他球団の捨てた選手の中からデータ分析で価値を見いだす手法だ。それでも一部の球団は、高度なデータ分析を使用することへの抵抗を続け、才能の評価や選手層の構築に、従来のスカウティング手法をより重視していた。

 現在、MLB所属球団は自前の分析部門を備え、データを駆使して意思決定にデータを提供するようになった。フィールド上の選手を従来の守備位置ではなく、各打者が打球を最もよく飛ばすコースに守備を配置するシフトは、かつてはめったに使用されていなかった。いまやそれは、どの試合でも見られる光景になっている。

 球団の最強打者は、以前なら3番か4番の打順を担うのが一般的だった。今は2番を打つことが目立っている。これは球団として最も得点が高くなりやすい打順をデータから割り出した結果だと言われている。投手が相手打者の強みと弱みに応じて、特定カウントの特定投球でストライクゾーンの特定エリアを攻めるのも、同じくデータに基づいた判断だ。守備側の選手が、投球の間に帽子をのぞき込む姿が見られるようになったのも同じ理由に基づく。各選手は帽子の中に対戦相手のスカウティングレポートやメモをしまい込んでいる。

 データ分析によって競争で優位に立つには結局、データ分析において他球団と自球団との差異化を図れるかどうかの問題になる。MLB所属球団のテキサス・レンジャーズ(Texas Rangers)の場合、Tableau Softwareのセルフサービス型ビジネスインテリジェンス(BI)ツール「Tableau」によるデータ視覚化が差別化を図るための試みとなっている。

 「どうすれば最適な形で伝えられるかが重要だ。そこにTableauの役割がある」。レンジャーズのアナリストであるランドール・パルファー氏はこう語る。


 第3回は、レンジャーズの取り組みを基に、データに基づく意思決定の文化を組織内に定着させる方法を探る。

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