Twitter社を買収し、レイオフを進めるイーロン・マスク氏に対して、人材マネジメントの専門家は苦言を呈する。「レイオフ後に残った従業員」の心理と、マスク氏のリーダーシップに関して、専門家はどう見るのか。
人材マネジメントの専門家が企業の人事担当者に対して、従業員に寄り添い、幸福度を高めるサポートをするように働き掛けるのは珍しいことではない。週4日勤務(週休3日制)といった新たな働き方の方針を検討する雇用主が出てきている中、波紋を呼んでいるのがTwitter社を買収したイーロン・マスク氏のアプローチだ。マスク氏はテレワークを廃止し、従業員の半分をレイオフ(一時的な整理解雇)の対象にする構えを示す。レイオフされずに残る従業員に対しては、長時間労働に同意するか、退職金を受け取って辞めるかの選択を求めている。
「マスク氏は間違った方向に進んでいる」と人材マネジメントの専門家は指摘する。こうした施策を推し進める場合Twitter社は、従業員、特に障害者の雇用維持や採用、法的リスクなどに関する継続的な問題に直面する可能性がある。報道によるとマスク氏が買収する前の同社は7500人以上の従業員を抱えていた。
米紙「Washington Post」によると、マスク氏は2022年11月16日(現地時間、以下同じ)に従業員に対して「従業員は極めて“ハードコア”になる必要がある」といった内容のメールを送った。これは長時間、猛烈に働くことを意味する。従業員は翌日の2022年11月17日までに「長時間猛烈に働くことに同意する」か「退職金を受け取って辞める」かを決めなければならなかった。
「Twitter社の従業員は、企業への長期的な貢献意欲を持たないまま、この要請に同意してしまう可能性がある」。ケース・ウエスタン・リザーブ大学(Case Western Reserve University)のウェザーヘッド経営大学院(Weatherhead School of Management)で、組織行動学の教授を務めるメルビン・スミス氏はこう推測する。「他に仕事がない場合、従業員は『他に働き口が見つかるまで、取りあえず同意しておくことが得策だ』と考える可能性がある」とスミス氏は話す。
マスク氏のマネジメントにおけるリーダーシップのスタイルと、マスク氏が所有する他企業での成功との間に相関関係を描くのは「間違いだ」とスミス氏は主張する。リーダーシップが事業を成功に導くこともあれば、リーダーシップに関係なく事業が成功することもある。
後編は、「Twitter社に将来の展望が見いだせない」と語る専門家の意見を紹介する。
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