「SIMカード」と「eSIM」はどちらも、通信サービスに必要な加入者情報を記録する。スマートフォンの利用者や事業者は、今後はどちらを使うべきなのか。
「SIM」(Subscriber Identity Module)は、通信サービスの加入者情報を記録する。小型のカードの形状をした「SIMカード」と、スマートフォン内部に組み込むタイプの「eSIM」といった複数の種類がある。今後のスマートフォン利用を見据えると、eSIMを使った方がよい理由を、研究機関が実施した試験が示した。eSIMに何が期待できるのか。
半導体関連の研究所Fraunhofer Institute for Reliability and Microintegration IZM(Fraunhofer IZM)と、セキュリティ技術を開発する企業Giesecke+Devrient(G+D)は、SIMカードとeSIMに関するライフサイクルアセスメント(LCA)を実施した。
G+Dによると、LCAで分析した全ての項目において、eSIMはSIMカードよりも環境負荷の低減につながることが明らかになった。特に注目すべきは、CO2(二酸化炭素)排出量を抑制できる点だ。LCAは、SIMカードの代わりにeSIMを使うことで、CO2排出量を46%削減できることを示した。
モバイル通信事業者やスマートフォンの利用者は、eSIMに関連する先端技術を利用することで、CO2排出量の大幅な削減に貢献できる可能性がある。「今後のモバイル通信におけるeSIMの重要性が明確になった」。G+D社のコネクティビティーおよびIoT(モノのインターネット)事業部長のヤン・ボック氏はそう評価する。
「ネットゼロ」(温室効果ガスの排出量と、除去量および吸収量が等しい状態)という目標達成を目指した取り組みが各分野で進んでいる。データセンターや製造施設が、利用するエネルギーを再生可能エネルギーに転換していることもその一例だ。
CO2排出量の削減や、CO2排出量を相殺することにつながる製品を顧客に提供することが、スマートフォンベンダーや通信事業者にとっては一段と重要になる。「今回の評価は、SIMカードのエコシステム(協業や協力の体制)を見直すに当たっての出発点だ」とボック氏は語る。
Fraunhofer IZMのリサーチアソシエイトであるデビッド・サンチェス氏は、「LCAの結果は、eSIMが環境に優しい通信手段であることを示した」と語る。サンチェス氏が特に注目するのは、eSIMはスマートフォンをエンドユーザーに提供するために必要となる機器や物流を減らし、CO2排出量を削減できる可能性を秘めていることだ。
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