企業のデータ保管の主翼を担うHDDは、ITベンダーが大規模レイオフに乗り出すあおりで大打撃を受けている。だがHDDベンダーが開発の手を緩める気配はない。今後はどうなるのか。
HDDは容量増大を継続するのが難しいという見方がある。だが昨今新たに登場するHDD製品においては大容量化の動きが顕著だ。そうした進化が見られる一方、大手ITベンダーが大規模なレイオフ(一時解雇)に踏み切るほど厳しい市場環境で、HDDの販売は大打撃を受けている。そうした中でも、まだ「SSDではなくHDDを選ぶ理由」が完全に消えたわけではない。
調査会社IDCのリサーチディレクターであるエド・バーンズ氏によれば、HDDの大口顧客は、ハイパースケーラー(大規模なデータセンターを運営する事業者)である大手クラウドベンダーだ。クラウドベンダーは景気減速の影響を受けており、Amazon Web ServicesやGoogle、Microsoftは従業員の解雇に踏み切り、支出を減らしている。「クラウドベンダーが今後も成長を続けたとしても、以前のような好調は続かずHDDの販売に悪影響を及ぼす可能性がある」とバーンズ氏は述べる。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミック(世界的大流行)の影響で特定の部品が不足するなど、サプライチェーンの混乱が発生した。Seagate TechnologyとWestern Digitalによれば、その影響は完全には消えていない。だが両社はそれよりも、在庫が過剰になっていることを、より差し迫った問題だとみる。
コンサルティング会社Coughlin Associatesのプレジデントを務めるトーマス・コフリン氏は、ハイパースケーラーによる支出の鈍化や、ハードウェア市場の鈍化、企業のシステムの変化が、影響を及ぼし合っていると分析する。「レガシーアプリケーションが減少し、一方ではハイパースケーラーによる大容量HDDの購入が鈍り、HDDベンダーの売上高に大きな影響を与えている」(コフリン氏)
HDDの“売り”は、SSDに比べれば容量単価が安いことだ。HDDベンダーはその点を追求し、記録密度を高めることでコストを抑制しやすい製品の開発に注力している。Western Digitalは2022年5月、CMR(従来型磁気記録方式)による22TBのHDDと、記録密度を向上させるSMR(シングル磁気記録方式)によって実現した26TBのHDDを発表した。Seagate Technologyも2021年に20TBのHDDの出荷を開始するなど、両社とも容量増大に継続的に取り組んでいる。
記録密度の向上がHDDベンダーの売り上げを抑制している可能性があると指摘するのは、調査会社NAND Researchのプリンシパルアナリストで、創業パートナーのスティーブ・マクダウェル氏だ。「以前は8TBのHDDを3台買わなければならなかったが、HDD1台で24TBを手に入られるようになった」(マクダウェル氏)
HDDベンダーが記録密度を重視する姿勢は、今後も変わることはないと考えられる。台数やコストを抑制しつつ必要な容量を確保できることは、SSDに対するHDDの利点だ。マクダウェル氏は「ストレージの需要が伸びて市場が好転すれば、高密度で費用対効果の高いHDDはより魅力的になる」と予測する。
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