SSDの次世代技術として「PLC」の開発が進む中、そのメリットと共にデメリットも浮き彫りになりつつある。商品化の最大の障壁とは何なのか。
次世代SSDを実現する技術として、1つのメモリセル当たり5bitのデータ記録ができる記録方式「PLC」(ペンタレベルセル)の開発が進んでいる。PLCにはさまざまなメリットがある一方、課題もある。最大の懸念点は何なのか。
PLCは1つのメモリセル当たり5bitを記録するために、電圧を32段階で切り替える必要がある。各段階の電圧差が非常に小さくなり、コントローラーが電圧差を正確に読み取るのが難しくなるため、ストレージ稼働の安定性が下がりかねない。コントローラーの負荷が上がれば、データの入出力にも影響が及ぶ可能性がある。
ストレージベンダーPure Storageの最高技術責任者(CTO)のアレックス・マクマレン氏によると、QLCからPLCに進化することで、SSDの記録密度は最大で約20%高まる。一方で「想定される複雑さやパフォーマンスの低下、耐久性の低さといった問題に対処するためのコストは大幅に増す恐れがある」と同氏は説明する。
QLCにおける電圧では、各段階間の電荷量の差は約6%だが、PLCではそれが約3%まで下がる。1つのメモリセルに2bitを格納するMLC(マルチレベルセル)や、3bitを格納するTLC(トリプルレベルセル)と比べて、PLCは大きなエラー訂正処理が必要になる。
調査会社Gartnerのバイスプレジデント(新興技術担当)ジョセフ・アンスワース氏によれば、PLCは同じシリコン領域により多くのデータを記録する。「容量は増えるが、データの信頼性と保持能力が下がる可能性がある」とアンスワース氏は語る。
ストレージベンダーはPLCを使ったSSD製品をまだ公開していないため、データ入出力の指標は明らかになっていない。ストレージベンダー自身も、パフォーマンス低下を想定しているという。PLCは耐久性の面にも懸念がある。「PLCは各段階間の電荷差が小さくなるため、慎重なプログラミングが必要になり、動作は遅くなる」(マクマレン氏)
第3回は、PLCを使ったSSDの用途に焦点を当てる。
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