限定的な機能や部品を搭載したクライアントデバイスが、シンクライアントデバイスだ――この定義が揺らぎつつある。背景にあるのは、仮想化技術やクラウドサービスの普及に合わせたクライアントOSの変化だ。
「シンクライアント」は、クライアントデバイスの機能を絞り込み、主要な処理をサーバに集約したシステムのことを指す。シンクライアントに利用するクライアントデバイス(シンクライアントデバイス)は従来、サーバの画面を転送し、操作するための必要最小限の部品や機能しか備えていないことが一般的だった。仮想デスクトップ用のクライアントデバイスとして、シンクライアントデバイスが広く使われている。
IT用語としてのシンクライアントは、実際の製品/技術の実態を正確に表さなくなってきている。その背景にあるのがシンクライアントOSをはじめとする、クライアントOSの多様化だ。
一般的なクライアントデバイスは、CPUやストレージなどのさまざまなリソースを筐体(きょうたい)内に集約することから「ファットクライアント」と呼ばれる。この言葉は、要素を絞り込んだ「シン」(Thin:薄い、細い)なクライアントデバイスである、シンクライアントデバイスとの対比から生まれた。
シンクライアントOSはファットクライアントを、シンクライアントデバイスとして利用可能にする。ハードウェアとしてはファットクライアントでありながら、実質的にシンクライアントデバイスになるということだ。既にシンの要素を失っているにもかかわらず、である。
「ブラウザOS」も、シンクライアントOSと同様にシンクライアントの定義を揺らがせる。ブラウザOSは、主にWebブラウザを通じて、クラウドサービスを利用可能にするためのクライアントOSだ。
ブラウザOSの代表例として、Googleの「ChromeOS」がある。ChromeOSを搭載するノート型クライアントデバイス「Chromebook」は、Webブラウザをローカルで動作させることから、サーバからの画面転送を前提とした一般的なシンクライアントデバイスとは異なる。ただしデータを基本的にクラウドサービスに保存する仕組みであり、ローカルストレージ容量を絞り込んでいるなど、シンクライアントデバイスと同様の特徴を持つ。
Googleは、MicrosoftのクライアントOS「Windows」を搭載したPCやAppleの「Mac」といったファットクライアントで、ChromeOSと同等の機能を利用できるようにするクライアントOS「ChromeOS Flex」を提供している。ChromeOS Flexを搭載したファットクライアントは実質的にはChromebookになり、つまりシンクライアントデバイスと同様になる。
第4回は、シンクライアントの進化をけん引する製品をまとめ、これらの製品を市場でどのように位置付けるべきなのかを考える。
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