クラウドインフラを構築するためのサーバやストレージへの支出額は増えたはずなのに、実際の導入数は減少した――。IDCが明かした、この“奇妙な実態”の背景とは。
IT調査会社のIDCによると、クラウドインフラ構築を目的とした、サーバやストレージといったハードウェアへの支出額が増加傾向にある。クラウドインフラに対するニーズの旺盛さを反映した結果のように見えるが、実態はそうではない。実はハードウェアに対する需要は、むしろ落ち込んでいるのだという。どういうことなのか。
IDCの調べでは、ユーザー企業やクラウド事業者がクラウドインフラ構築のために、2023年第1四半期(2023年4月〜6月)に調達したハードウェアの数(販売ユニット単位)は、前年同期から11.4%減少した。一方でハードウェアの平均販売価格(ASP)は29.7%増加したという。「企業は前年同期と同程度のコストを費やしたとしても、より少ない数のハードウェアしか調達していない」と、同社アナリストのクバ・ストラースキ氏は語る。
インフレ(物価上昇)や金利上昇に合わせて、ハードウェアベンダー各社が自社製品を値上げしたことが、ハードウェア支出額増加の背景にあるとIDCは指摘する。ストラースキ氏によると、ハードウェア価格の高騰と厳しい経済情勢のため、ユーザー企業はIT投資を抑制している。
標準構成よりも価格が高いハイエンドサーバの調達が進んでいることも、ハードウェア支出額増加に影響しているとIDCはみる。特に人工知能(AI)モデルのトレーニングニーズの拡大を踏まえて、クラウドベンダーを中心にGPU(グラフィックス処理装置)搭載サーバの調達を進めているという。金融サービス企業や政府機関といった、比較的大規模なユーザー企業の間でも、GPU搭載サーバを導入する動きがあるとストラースキ氏は指摘する。
後編は引き続き、クラウドインフラに関するハードウェア市場の動きを詳しく説明する。
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