「5G」に投資したら“大損”なんてことも? なぜもうからないのか露呈する5Gビジネスの現実【中編】

「5G」にはIoTをはじめさまざまな用途の引き合いがあり、市場は今後も拡大すると考えられる。だが5Gの収益性に関する視点を忘れてはいけない。5Gには本当に期待していいのか。

2023年08月28日 05時00分 公開
[Deanna DarahTechTarget]

 「5G」(第5世代移動通信システム)のビジネスはもうかるのか否か――。これは5Gの用途によって大きく異なる。IoT(モノのインターネット)や固定無線アクセス(FWA)は、5Gの代表的な用途として期待が集まりがちだが、その話題から収益性に関する視点はいつも抜けている。ここではコストも踏まえて、5Gに本当に期待していいのかどうかを考えてみよう。

コストが数十倍になることも? だから「5G」はもうからない

会員登録(無料)が必要です

 FWAは農村部に高速通信のためのネットワークインフラを構築しやすくし、IoTは各種スマートデバイスのデータ通信を実現する。移動体通信事業者(MNO)はこうした用途を実現するために5Gへの投資を進めている。だがFWAにしてもIoTにしても、ROA(総資産利益率)がどれだけになるかは明確ではない。

 調査会社Juniper Researchが2022年9月に公開した報告書「5G Fixed Wireless Access」によれば、FWAは2022年に5億1500万ドルの売上高をもたらした。この売上高は、2023年には22億ドルに到達する見込みだ。

 市場規模が拡大するにもかかわらず、5Gビジネスからの利益を得にくいのは、コストに問題があるからだと考えられる。MNOはコストについて明確にしていないが、PwCは5Gに関連する用途のコストや収益性について、以下のような規模になる可能性があると見積もっている。

  • 拡張現実(AR)体験に掛かるコストは、一般的なモバイル通信サービスの3~4倍
  • FWAに掛かるコストは、一般的なモバイル通信サービスの22倍
  • 消費者はFWAに有線回線のプランと同じ料金水準を求めているため、FWAの利益は一般的なモバイル通信サービスの30~40分の1

 IoTサービスは用途が多岐にわたるため、そのコストを一概には言えない。データ転送レート(一度に送れるデータ量)を抑えて事足りることもあれば、遠隔医療や製造現場など、より広い帯域幅(通信路容量)と低遅延を必要とする場合もある。その場合、従来のモバイル通信サービスに比べて、コストは大幅に膨らんでしまう。

 コストと同様に、IoTの用途が生み出す収益については現状ではまだ曖昧(あいまい)だ。各種IoTの用途と一般的なモバイル通信サービスの収益性を比較した場合、あるIoTの用途では70分の1、ある用途では4倍以上といったように、用途によって収益性が大きく異なる。


 後編は、5Gの市場を深耕し、5Gサービスを成功させるためにはまず何に着手すべきなのかを考える。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 ゾーホージャパン株式会社

ネットワーク遅延の原因を追究、帯域利用の現状分析と将来予測を手軽に行う方法

リモートワークやクラウドサービスが拡大する中、ネットワーク遅延の課題を抱える企業も少なくない。通信遅延は生産性にも影響するだけに契約帯域の見直しも考えられるが、適切な帯域を把握するためにも、帯域利用状況を分析したい。

事例 株式会社マクニカ

通信コストを約4分の1削減&Web会議も快適に、事例で学ぶネットワーク改善術

在宅勤務でSIM通信を利用していたが、クラウドの通信量急増により、帯域が圧迫されWeb会議での音切れが発生したり、コストがかさんだりと、ネットワーク環境の課題を抱えていたシナネンホールディングス。これらの問題を解消した方法とは?

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

VPNが「もはや時代遅れ」であるこれだけの理由

VPN(仮想プライベートネットワーク)は、セキュリティの観点から見ると、もはや「安全なツール」とは言い切れない。VPNが抱えるリスクと、その代替として注目されるリモートアクセス技術について解説する。

製品資料 アルテリア・ネットワークス株式会社

VPNの3つの課題を一掃する、次世代インターネットVPNサービスの実力

インターネットVPNサービスの市場規模は増加傾向にあるが、パフォーマンスやセキュリティなどの課題が顕在化している。VPNの利用状況などのデータを基にこれらの課題を考察し、次世代インターネットVPNサービスの利点と可能性を探る。

市場調査・トレンド ゼットスケーラー株式会社

ファイアウォールとVPN中心のセキュリティアプローチは危険? 4つの理由を解説

代表的なセキュリティツールとして活用されてきたファイアウォールとVPNだが、今では、サイバー攻撃の被害を拡大させる要因となってしまった。その4つの理由を解説するとともに、現状のセキュリティ課題を一掃する方法を解説する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。